K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

本田珠也: TAMAXILLE

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本田珠也: TAMAXILLE (ピットイン, 2017)
1. Solar (M.Davis)
2. Quiet Moment (辛島文雄)
3. Right Off (M.Davis)
4. I Remember Clifford (B.Golson)
5. 流氷 (日野元彦)
本田珠也 (ds), 類家心平 (tp), 井上銘 (g), 須川崇志(b,elb)
録音:2017年6月5日 新宿ピットインにてライヴ録音

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随分前に出たアルバム。もっきりやで本田珠也のドラムの凄さを知った後だったので、発売後に直ぐ入手。使い捨て、ならぬ聴き捨てが多いボクだけど(そりゃ山のような未聴在庫があるので)、実に良く聴いた。ジャズの名曲カヴァー集だし、原曲の雰囲気を良く踏襲し、本田珠也の緻密で豪放なドラムが煽る訳だから楽しくない訳がない。しかも、類家心平のトランペットのみならず, 井上銘のギター, 須川崇志のベースも含め、聴き所が細かく設定されているのだから。モダンジャズから電化マイルスのファンク、日野元彦の流氷まで、振れ幅も広い。

だけど、聴き手として、この楽しさは何処から来るのだろうか、と自問自答のループのなかに入った。

1960年代後半の菊地・日野カルテット、あるいは菊地の初リーダ作?のマトリクスを聴くと、「本場のジャズ」のコピー感、を濃厚に感じる。日本のジャズがIdentifyされる前、1970年前後に見事に消え去るあの空気。聴いていて面白くないし、何より哀しい印象を受けた。

そのコピー感と何が違うのだろうか?確かに違うのだ。そんなコピー感は微塵もない。しかしRight offを聴いていると、そんな謎が頭から離れないのだ。何が違うのだろうか。

今もって、そんな自問自答はあるのだけど、やはり面白いし楽しい。原曲の形を最大限借用しながら、ボクたちにとって馴染みのある彼らの音世界を最大限に発揮している、ことが面白いのかなあ、と朧気に思っている。いや、彼らの音空間による、一世代二世代前のジャズへの強いrespectが、21世紀の日本のジャズとして素晴らしく成り立っていることに驚いてしまったのだろうな、と思う。

最初のソラーが素晴らしくて、何となくの既聴感もあって、こんな演奏はマイルスのアルバムにはないよなあと首をヒネって、パット・メセニーのQuestion and answerを聴いてみたり。勿論、マイルスのJack JohnsonやTBMの流氷も。そんなことも楽しかったな。

答も愉しませてくれた素晴らしいアルバム。金沢に来ないのかなあ。頼みます平賀さん! 

TAMAXILLE(タマザイル)

TAMAXILLE(タマザイル)