K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Don Cherry: Home Boy (Sister Out)

Don Cherry: Home Boy (Sister Out) (1985, Barclay)
A1. Butterfly Friend (Don Cherry) 3:43
A2. I Walk(Ramuntcho Matta) 3:10
Don Cherry(rap), Fil Mong(b), Jean-Pierre Coco(perc), Abdoulaye Prosper Niang(ds)
A3. Rappin' Recipe (Don Cherry) 6:49
A4. Reggae To The High Tower (Don Cherry) 4:06
A5. Art Deco (Don Cherry) 2:52
B1. Call Me (Don Cherry) 4:34
B2. Treat Your Lady Right (Don Cherry) 6:06
B3. Alphabet City (Don Cherry) 3:45
B4. Bamako Love (Don Cherry) 5:37
Polo Lombardo(Conch)

Don Cherry(vo, Ngoni [Doussn' Gouni], tp, p, synth, Melodica), Elli Medeiros(vo), Jannick Top(b), Negrito Trasante(perc), Claude Salmieri(ds), Ramuntcho Matta(g)
Engineer: Michel Reynaud
Executive-Producer: Bernard Meyet
Producer : Ramuntcho Matta
Recorded and mixed at Studio Caroline, Paris in may-june 1985

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先日のミュージックマガジンのジャズベスト盤のなかで、チェリーからBrown riceが選ばれていた。かなりイイ線の選盤で、これこそSJ誌で選ばれないだろうなあ、という内容。

ボクのなかではBrown Rice以上にHome Boy (Sister Out) が好み。もうジャズから解き放たれて、好き放題のチェリーが格好いいのだ。加齢するほど軽やかになる、素晴らしいなあ。ボクのなかで、(10指は無理だけど)両手・両足くらい折って盤を選ぶならば、必ず入れたい一枚。

最近になって知った、当時のRamuntcho Mattaのアルバムを聴くと、その影響は大きいなあ、とも思うのだけど、やはりチェリーの器あっての音だと思っている。Ramuntcho Mattaのアルバムでのトランペットって、もろにチェリーのコピーだし。

こんな流れの端っこに我らが清水靖晃の当時の音があるなあ、なんて思いながら楽しく聴いている。

チェリーはこのアルバムの10年後にこの世を去るのだけど、この後のアルバムには更に発展したようなものはない、ようだ。最近になって、レコードに入りきらなかったトラックを含め再発されている。いつでも聴きたい音だから、再発レコードではなく、ディジタル音源で買おうかなあ、と思っている。だって、これこそ装置問わずの音。小汚いラジオかなんかで、木陰で聴きたい音、なのだ。

[2018-09-11]

 実は一番好きなチェリーのアルバムは最晩年のコレ。もう何もかも解脱して、彼の軽さ、を凝縮したようなアルバムになっている。何回聴いても、極楽のチェリーを聴く感じ。今、CDもレコードも再発されているようだ。チェリー・ファンは是非に!

 [2016-07-29] ジャンルを軽々超えた軽やかなトランペッター

 ドン・チェリーって、何をやっても、飄々と軽い感じがいいなあ、と思う。晩年はジャンルのない音楽をやっていた。

はじめてDon Cherryを聴いたのは、どのアルバムだったのだろうか?初期のColemanは持っていないし。なかなか思い出せなかった。随分頭をひねって思い出したのはJohn ColtraneのAvant Garde(Atlantic,1960)。John ColtraneDon Cherry, Charlie Haden,Ed Blackwellと演っている。今聴くと、そんなに前衛的な感じでもなくて、Don Cherryのポケットトランペットがコミカルに、そしてシニカルなトーンで生真面目なColtraneに絡んでいる感じ。圧倒的にCherry, Haden, Blackwellが音世界を作っている。

Keith Jarrettでジャズを聴きはじめて、ベースのHadenに興味を持って、その周辺に広げる過程で捕まえたような記憶。それからDon Cherryが気になる存在になった。Mu(BYG)でのEd Blackwell(ds)とのデュオとか、ECMでの幾つかの録音とか、観念的なFree Jazzとは一線を画した土着的かつ瞑想的な音世界がとても好きなのだ。

http://www.youtube.com/watch?v=lSJyyj8fAX4

Home Boy Sister outはCherryが亡くなる10年前、晩年に残したアルバム。ジャズ、のframeworkは跡形もないレゲェやファンクのビートに乗ってポケットトランペットを楽しくGrooveさせたり、唄ったりしている。とてもpopなのだけど、Cherryのアルバムとして全く違和感がない。そもそも、Cherryとは「何もの」でもなくて「Cherryそのもの」でしかない、ということがよく分かる。彼の音楽は、年々重さというものがなくなってきて、軽やかな飛翔感を増していったように思う。そして彼岸に消えた。