K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

富樫雅彦:Session In Paris, Vol. 1 Song Of Soil (1979) 顔合わせを超えるもの

富樫雅彦:Session In Paris, Vol. 1 "Song Of Soil" (1979, Paddle Wheel)
A1. June 6:12
A2. Words Of Wind - Part 1 2:53
A3. Oasis 10:24
B1. Song Of Soil 4:48
B2. Words Of Wind - Part 2 5:32
B3. Rain 8:07
富樫雅彦(perc), Charlie Haden(b), Don Cherry(Cor, fl, tp, Perc)
Engineer [Assistant] : Lauren Peyron
Engineer [Mastering] :Shogo Sakamaki
Engineer [Mixing] : Hatsuro Takanami
Engineer [Recording]: Jean-Louis Rizet
Photograph: Philippe Gras
Producer: Motohiko Takawa
Recorded July 12 & 13, 1979

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これも富樫雅彦、のみならずドン・チェリー、チャーリー・ヘイデンとの好きなアルバム。

ヘイデンって、概ね好きな奏者なんだけど、概ねとしたのは「ある種のワン・パターン」が気になるのだ。このアルバムでは、富樫とともに粘るような、パルスとのビートとも呼べないような揺動が沸き上がる曲が最後に。その緊張感が素晴らしい。

富樫の和風潤色が強い曲も時折引っ掛かるのだけど、B面2曲目では、見事にチェリーの笛と見事な調和。

そんな感じで、どこから切り取っても3人の密な対話が弾ける素晴らしいアルバム。

 

[2016-04-15] 顔合わせを超えるもの

ボクは技術者で、その技術成果の価値判断の基準の1つは、1+1>2であるかどうか、である。ただの組み合わせでなく、異なる2つの要素を組み合わせたときに、単独でにはない新たな効果が生じるか、否か。

このアルバムのような「セッションもの」もそうだ、と思う。大半は、聴く前にその音が予想されるようなものが多く、面白くない。このアルバムの良さ、は顔合わせを超えるもの、であるからだと思う。(多分)、富樫の作曲行為のレヴェルの高さ、が、このアルバムの素晴らしさに繋がっている。

奏者間で触発されたような音が、絶えず音場に叩き込まれる、ような快感は勿論あるのだけど、Song Of Soilの題名のとおり、雨が降り、土煙の匂いが漂うような、全体的な統一感が素晴らしくて、個々の音の素晴らしさを超えるような、映像的な音世界が作られている。富樫のspiritual natureでの日本の風土に根ざしたような音、チェリーの土着的な音、それらが大地に還っていくような演奏。ヘイデンがジャズ的なimprovisationとの回路を見事つないでいて、一瞬たりとも無駄がない、凄さ。

この時期のキング・レコードのジャズ・アルバムは、企画だけでなく、盤質、録音ともに素晴らしい。日本の自主制作盤の頂点たる時期だったのだなあ、と思う。いい時期を体験しているのだなあ、と改めて思う。

(街のレコード屋さんにジャズ・コーナーがあって、こんなアルバムが並ぶのですからねえ。)


Togashi / Cherry / Haden - oasis