K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Herbie Hancock: The Piano(1978) ハンコックのピアニズムとダイレクトカッティングの美しい邂逅

HERBIE HANCOCK / ハービー・ハンコック / THE PIANO / ザ・ピアノ

Herbie Hancock: The Piano(1978, CBS/Sony)
A1. My Funny Valentine (R. Rodgers-L. Hart) 7:42
A2. On Green Dolphin Street (B. Kaper*, N. Washington) 3:20
A3. Someday My Prince Will Come (F. Churchill*, L. Morey) 4:34
B1. Harvest Time (H. Hancock) 4:48
B2. Sonrisa (H. Hancock) 3:40
B3. Manhattan Island (H. Hancock) 3:56
B4. Blue Otani (H. Hancock) 3:24
Herbie Hancock(p)
Engineer: Brian Bell, David Rubinson, Fred Catero, Tomoo Suzuki, Hirohiko Yamanaka, Mikio Takamatsu, Takeshi Sukegawa
Recorded on 25-26 October 1978 at CBS/Sony Studios, Tokyo
-----------------------------------------------------------------

先日の東京FMの「村上Radio」で「ダイレクト・カッティング」が紹介されていて、これもその1枚。改めて聴いてみると、その音の良さに痺れた。

割と村上春樹が紹介する音楽とは、合わないというよりは、趣味が重ならない。直交する、という塩梅。あまり響かない、のである。何故かは分からないけど。今回の「ダイレクトカッティング方式」のレコード特集もそう、だと思った。

ダイレクトカッティング方式とは、演奏をテープに録音しないで、直接、カッティングマシンでレコード盤の溝を刻む技術。テープ収録に伴う音質劣化がない、とされる。しかし一旦演奏をはじめると片面20分程度は一発勝負で仕上げないといけないから、奏者には心理的重圧をかける、そんな方法。だからダイレクトカッティング、と聞いて、半世紀前の「最先端高音質アルバム」なのだけど、そのHiFi再生に向けたテクノロジー優先の録音方式が、なんか彼の醸す世界観と合わないなあ、と思ったのだ。

Radikoで番組を聴いてみると、ハービー・ハンコックの本盤が、とても典雅で、同世代のチック・コリアもびっくりの内容。以下のイベント対応で、じっくり聴いてみた。

ハンコックのソロというと、FloodやVSOP冒頭の処女航海が真っ先に思い出される人が大半だと思う。しかし全く違う、ピアニズムに溢れた粒立つ音が実に美しい演奏。実に上手い、というかチック・コリアを越えるのでは、と思われる。あの処女航海はヤマハの電気アコウスティックピアノだから、そもそもピアニズムを聴かせるものじゃないのだけど。

同時に幾つかのダイレクトカッティング盤を聴いたが、群を抜いて音の鮮度が高い。実に素晴らしい。当時のCBSソニーの技術力の高さを示す一枚ではないか。ハンコックのピアニズムとの美しい邂逅を愉しむことができる。

 

PIANO

PIANO

Amazon