K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Herbie Hancock: The Prisoner (1969) 過渡期ではあるが案外面白い

Primary

Herbie Hancock: The Prisoner (1969/BST84321=>2020, Blue Note/B0031300-01)
A1. I Have A Dream(H. Hancock) 10:55
A2. The Prisoner(H. Hancock) 7:55
B1. Firewater (C. B. Williams) 7:30
B2. He Who Lives In Fear(H. Hancock) 6:50
B3. Promise Of The Sun(H. Hancock) 7:50
Herbie Hancock(p, el-p), Johnny Coles(flh), Joe Henderson(ts,alto-fl), Buster Williams(b), Albert "Tootie" Heath(ds), Garnett Brown(tb), Jack Jeffers, Tony Studd(b-tb), Hubert Laws, Jerome Richardson(fl), Jerome Richardson, Romeo Penque(b-cl)
Recording: Rudy Van Gelder
Producer: Duke Pearson
Recorded at Rudy Van Gelder, April 18, 1969 (A2, B2) on April 21, 1969 (A1) and on April 23, 1969 (B1, B3).
Mastered by Kevin Gray
-------------------------------------------------------

Kevin Grayの再マスタリング・カッティング盤が面白くて、最近はブルーノートばかり聴いている。やはり1970年代以降のECMの音に親しんだ感覚からすると、ルディ・ヴァン・ゲルダーの圧縮された音、特にブルーノートの音は古色蒼然の感を拭えない。その音が良い、のも事実ではあるが、紫煙ゆらぐ暗いクラブの音、という印象か。

Kevin Grayの再マスタリングによるレコード盤を聴いていると、音のダイナミックレンジが広がっていて、高音の自然な拡張が与える音の鮮度に惹かれてしまった。

だから、ルディ・ヴァン・ゲルダーの音、と異なる感触が楽しいのだ。

オリジナル盤(左)とTone poet盤

 

ということで、その感触がどの程度正しいのか、1000番台から4000番台まで、聴き比べている。

この盤はライオン時代が過ぎ去った、ピアソンのプロデュース時期。それでもライオン時代の余韻がまだ十分残っている頃。ハンコックはSpeak like a childのピアノ・トリオ+ホーンセクションの洗練された音の時期から、ワーナーの Mwandishiでの浮遊する電化サウンドへの過渡期。ということで、あまり聴いていなかったが、聴いてみると好み。過渡期ではあるが案外面白い。

編成的にはSpeak like a childと似たようなピアノ・トリオ+ホーンセクションなんだけど、ピアノがちょっと退いて、ヘンダーソンやコールズらのソロが目立つ。Speak like a childはピアノ・トリオの比重が高かったが、これはビッグ・コンボの体で、ソロとバックの編曲が良いので、とても楽しめる。

面白いな、と思うのは、同時期のマイルス(1969年の欧洲ツアーの過激さやBitches Brewの斬新さ)から離れた保守的とも思えるハンコックの音。急旋回をはじめるのは、ブルーノートを離れたこの後。この時間差をはっきりと認識できた。

The Prisoner [12 inch Analog]
The Prisoner

The Prisoner

Amazon