K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Andrew Hill: Black Fire (1963) 良質なジャズアルバムとして捉えきれない感覚

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このレコードはジャズを聴きはじめて1年くらいで購入。10代のお仕舞い。当時のキング盤。いわいる名盤だったから。その後、RVG刻印のあるリバティ盤、そしてこのNY盤、合計3枚持っている。「ブルーノートの音」に惹かれた時期があって、いや今も決して嫌いでなく、そんな感じでレコードを集めてみた。NY盤にしたって、ステレオで、かつ「耳マーク」が刻印されていないので、そんなに高価ではない。キング盤定価の3枚分くらい、じゃなかっただろうか。

今、聴き直すと、昨晩から暖めてある真空管アンプ、30年前のJBLのスピーカーと巧く共鳴し、まさに「期待したブルーノートの音」が響く。ヘンダーソンのテナーがずっしり響く。

しかしヒルのアルバムとしては、ボクの最近の嗜好から「外れている」ことに、すぐ気がつく。ピアノの音がデッドに収録されていて、音の音響的な深み、や鮮度がすっぽり抑え込まれているのだ。彼のピアノの魅力が半減されていて、なんかクラブでアップ・ライトを叩いているような感じ。このツルっとした感じが、まさにブルーノートの音、なのだ。その後のアルバムからの後付けの知恵、で、この録音はヒルに相応しくない、と感じる訳だ。

勿論、ジャズらしいアルバム、としての味は素晴らしい。ヘンダーソンに耳の焦点を充てると、そんな不満も収まり、「ジャズを聴いている」感触が楽しいから不思議なものだ。これはライオンの音の嗜好で、ヴァン・ゲルダーの嗜好ではあるまい。ボクがマルに興味を持ったのは、ドルフィーのファイヴ・スポットでのライヴ。これもヴァン・ゲルダーの録音であるが、ピアノの音はもう少し響きを捉えている。だからブルーノートの中音域偏重はライオンの音、なのだと思えている。ディスクユニオンの塙さんが、ブルーノートの再発企画にあたって「ヴァン・ゲルダーの音の再現は狙っていない」と云っていた、ことがよく分かる。

このアルバムも、ヒルの「少し複雑な曲」を余韻を持たせながらヒルらしく弾いている、と思う。抑えられた残響がそれを感じさせる。そうなると、テナーもベースもドラムも気持ちの中で消したくなってくる、のだ。異物のように感じるから。

良質なジャズアルバムとして捉えきれない感覚、が、自分のなかで、この1年くらいで強くなった、ことが一番面白かった。

追記:

決してブルーノートは嫌いじゃないので、RVGに拘らず、キング盤、東芝盤で揃えたらいいなあ、と思った!

Black Fire

Black Fire

 

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Andrew Hill: Black Fire (1963, Blue Note)
A1. Pumpkin (Andrew Hill)
A2. Subterfuge (Andrew Hill)
A3. Black Fire (Andrew Hill)
B1. Cantardos (Andrew Hill)
B2. Tired Trade (Andrew Hill)
B3. McNeil Island (Andrew Hill)
B4. Land Of Nod (Andrew Hill)
Andrew Hill(p), Joe Henderson (ts on A1, A3, B1, B3, B4), Richard Davis (b), Roy Haynes(ds)
Recorded by Van Gelder
Producer: Alfred Lion

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