K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

桜に狂ふ日々:エピローグ


金沢に移り住んで最初の春に桜を追いかけようと楽しみに過ごしてきた数カ月,そのときを迎えて,まさかにも3週間以上のながきにわたって楽しめるとは思わなかった.犀川河畔からはじめた観桜も,そろそろ区切りのときがきている.先週満開だった卯辰山に再びでかけて,去りゆく桜の候をたのしむことにして,雨降りの前に飛び出した.

ポットにコーヒーを沸かしたてのコーヒーをつめて,自転車のペダルを踏み込み30分,犀川を越え,小立野をまたぎ,浅野川を通り過ぎ,卯辰山を登った.路には砂のように桜の花びらが流れていた.谷間におりると,少し大気が変わり,清澄な冷たさを感じはじめ,目の前に花が広がる.胸が高なる.

 

今日は曇天で空の様子もふらふらしていたのだが,明るければ彩があり,暗ければ翳りがあり,コヒーを呑みながらぼんやり芝のうえで転がっていたら,僕にとっての桜のエピローグとなってきたように思えた.初々しい桜花もいいが,散りゆく桜もとても美しい.

 

1時間ほど寝そべっていたのだけど,最初は遠巻きにしていた鳥たちが,すこしづつ近づいてくることを感じた.風がなかったのだけど,ときどき花吹雪が落ちてくる.鳥たちの贈り物.間近にくるまで待てなかったのだけど,多くの鳥たちが遊ぶ不思議な場のなかで空をじっとみていた.



鳥たちが騒いで飛びたったあとに,こぼれた花が落ちていた.



寝そべって空をみているうちに幾何学的な線と線の絡みあう様子が影となってきた.天蓋に貼られた薄い硝子の亀裂,あるいは空に張られた電灯線.鳥たちがくぐっていく.いつまでも見ていたい.



そんなどうでもいいようなことを,ぼんやり考えながら,僕の桜の候に区切りをつけたように感じた朝だった.