K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Stefano Bollani: Stone in the water (2009)季節が変わり「よもや」と思ったら「やはり」のECMの音世界


ECMレーベルのジャケットは好きなので大きな写真で出しています。

Stefano Bollani: Stone in the water (ECM)
  1. Dom de iludir
  2. Orvieto
  3. Edith
  4. Brigas nunca mais
  5. Il cervello del pavone
  6. Un sasso nello stagno
  7. Improvisation 13 en la mineur
  8. Asuda
  9. Joker in the village

Stefano Bollani(p), Jesper Bodilsen(b), Morten Lund(ds)

昨日はよく冷えた、晴れた朝にリヒテルによるショスタコーヴィチの「前奏曲とフーガ」を聴いて、すっかり気持ちを持って行かれた。帰宅してからもターンテーブルはまわり続けた。季節によく合う感じで、ボクの部屋の寒々しい空気に凛としたオトがこぼれていくようで、気持ちがよかった。

もっとも輪島であがった小さなカワハギの一山を安く買って、味噌仕立ての汁にしたり、飛龍頭を炊いたりしながら聴いていたのだから、透明感だの凛だの云う程のムードもあったものじゃないけどね。ラーメン屋のジャズみたいなもので。仕方ないなあ。

昨日の記事に書いたけど、暑い時期に聴いた「前奏曲とフーガ」はピンとこなかったのだけど、冷え込みはじめて冬の到来を意識する今、あるいは体や気持ちの端々に冷たさを感じる今、すっと気持ちに入ってきた。

今朝はなんとなく「よもや」と思い、CDプレイヤーにいれたのはStefano Bollaniの「Stone in the water」。「静謐系」で聴くBollaniはピンとこなかったので、1回聴いて控え選手となったECMの一枚。北欧のメンバー Jesper Bodilsen(b)、 Morten Lund(ds)とのトリオ。前作のStuntレーベルからの同じメンバーでのGleda, Songs From Scandinavia 」同様、ラテン芸人に無理やり北欧ムードを出させているようで、ボク的には合わなかった。

CDプレイヤーからのオトに対するボクの反応は「やはり」。気持ちに流れるように入ってきた。ただ、あのBollaniとは違うBollaniとして。頭の中のファイルシステムのなかで、明らかに違う演奏者として登録されたことを感じる。同じ名前のディレクトリが2つある感じ。正確に云うと、
Bollaniというディレクトリと、Bollani(Eicher)というディレクトリ。それにしてもBollaniの抑制的なピアニズムがリリカルに気持ちのなかで響いているのは何故だろうか。

考えてみると、ボクが今聴いているのはBollaniという演奏者を通じてECMレベールのプロデューサーであるMansfred Eicherの美意識を突きつけられている、のではないかということ。季節が変わり、少し気持ちや気分が揺らいでいるなかで、Bollaniはこうじゃなくっちゃという気持ちを抑えこんで、「おなじみ」のEicherの音世界がすっと侵入しているのかなあ、と思った。

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クラシックのピアノの音を聴くようになって、気がつくとジャズのピアニストに対してもオトの鳴り方がとても気になるようになった。ECMというドイツのレーベルの音世界には30年以上親しんでいる訳で、そのECM new seriesから出されているクラシックのCDなんかに手を出すと、とてつもなくはまり込む予感もある。シフなんかは好きだし。キースジャレットのクラシックも聴ける、という話もある。こんなことを考えて夜を過ごしていると、楽しいような恐ろしいような気持ちになっております。果てのない旅に出ているような...