K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Jazz会#15:白人ピアノジャズの系譜をたどって


白人ピアノジャズの系譜

 久々に私が選盤するジャズ会。特別ゲスト氏がお越しになるとのことで、その彼の好みにあわせてピアノ特集(何回目かな?)
 ジャズが黒人音楽に由来することは間違いないのだろうけど、早い時期から多くの白人奏者も加わっている。そして明らかにジャズのフォーマットを用いながら、独自の音楽空間を築いていることは否めない。そんな白人奏者が弾くピアノを取り上げてみたい。ビル・エヴァンスを軸に、ささやかな断章を切り取ってみたい。

0.プロローグ
Brad Mehldau: Live In Marciac (2006, Nonesuch)      

  
piano solo
今年発売された話題作。ボクは初リーダ作を聴いて今ひとつピンとこなかったから,メルドーはずっと放置。最近、気になって手を出し始めたけど、やはりピンとこなかった。だけど、このアルバムを聴いてぶっ飛び。ソロの表現力の多彩さに痺れた。凄い一枚。今のところ今年一番!

1.ビル・エヴァンス以前の白人ピアニスト
 古くはテディ・ウィルソンとなるのでしょうが、ここではモダン期以降で...
(1) [LP] George Shearing: September in the rain (1950, Verve)


George Shearing (p),  Chuke Wayne (g),  Jhon Levey (b),  Denzil Best(ds ), Marjory Hyams(Vib)
ちょっと洒脱な感じの音でモダン・ジャズとは一線を画す盲目のピアニスト。つい先日亡くなった。盲導犬を連れて60年代に来日して,結構人気があったたらしい、というのは小林信彦だか景山民夫の話のなかに、クレージーキャッツのメンバーがナイトクラブでシアリング役と「犬」役になってふざけていた事が書かれていたから。

(2) [LP] Dave Brubeck: Jazz at Oberlin (1953, Fantasy)


Dave Brubeck (p), Paul Desmond (as), Ron Crotty (b), Lloyd Davis (ds)
ブルーベックといえば「Time Five」なのだけど、ボクは持っていません。公民権運動の遥か前に、大学キャンパスで演奏、ってあたりが    如何にも白人社会だなあ、と思ったりする。

(3)[LP] Eddie Costa: The House of blue lights(1959, Dot)    


Eddie Costa(p) Wendell Marshall (b) Paul Motian(ds)
エディ・コスタタル・ファーロウ(g)のレコードで聴いているのだけど、彼のリーダ作はよく思い出せない。確かvibとの兼業のピアニスト。打鍵が打楽器みたいだったよな、しか思い出せないから、まあジャズ会で聴こうかと。

2.ビル・エヴァンスを少しだけ
(1)[LP] Bill Evans: Intermodulation    (1966, Verve)


Bill Evans(p), Jim Hall(g)
ともに白人ジャズの結晶のような二人による音は、ああこれがそうね、って感じ。Singers unlimittedが白人の声の結晶のようなコーラスであるように。

(2)Bill Evans:Alone (Again) (1975,Fantasy)


piano solo
ボクは70年代のエヴァンスが好きだ。ピアノの響きが年々円熟していき、溶けるように甘くなっていくから。そして70年代末期には溶けきって、指も止まり、彼は召されて去った。
    

3.ビル・エヴァンスの背中を見ていた奏者たち
(1)[LP] Don Friedman: Circle Waltz (1962, Riverside)


Don Friedman (p), Chuck Israels (b), Pete La Roca (ds)
ほぼ同時代の彼が気の毒なのは、エヴァンスの影響をみてしまうから。本当は白人奏者共通のメンタリティかもしれないのに。

(2)Denny Zeitlin: Cathexis (1964,Columbia)  

 
Denny Zeitlin(p), Cecil McBee(b),Frederick Waits(ds)     
精神科医兼業のピアニスト。この音を聴くと、早くもpost-Evansの大物だったのだなあ、と思う。大物にはならなかったけどね。とっても格好がいい。

(3)[LP]Paul Bley/NHOP: ( 1973, Steeple Chase)


Paul Bley (p), Niels-Henning Orsted Pedersen(b)
これもまた白人ピアノ奏者らしい、感じ。ちょっと小難しいオトが好きなんだよね。といっても根がスケベ・オヤジ的なメンタリティが音に出ている。

(4)[LP]Chick Corea: ARC(1970, ECM)


Chick Corea (p), Dave Holland (b), Barry Altschul(ds)
これも小難しいコトを考えていた若き日のChick Corea。一曲目のネフェルティティはウエィン・ショーターの曲なのだけど、古代エジプトの王妃の名前。

(5) Steve Kuhn: Ecstasy (1974, ECM)


piano solo
このヒトもちょっと性的なタイトルがお好き。まあ耽美派なのだけど。ボクはニューヨークの今はなきSweet Basilで聴いたことがあるけれど、汗をかきかき熱演していたけどね。

4.キース・ジャレット---脇役として
たまには脇役としてのキースをどうぞ。
(1)Gary Peacock: Tales of Another (1977, ECM)


Gary Peacock(p),Keith Jarrett(p), Jack DeJohnette (ds)
3人の織りなす音の美しさには惚れ惚れしてしまう。Standardをやるずっと前の共演のリーダーはPeacock。

(2)Kenny Wheeler: Gnu High (1975, ECM)


Kenny Wheeler(p), Keith Jarrette(p), Dave Holland(b),  Jack DeJohnette(ds)
これもそう。ほんとうに美しい。管との共演は随分少なくなっているから貴重。    

5.そしてボクたちと同時代以降の白人奏者たち
(1)Michel Petrucciani: Flamingo (1996, Dreyfus)


Michel Petrucciani(p), Stephane Grappelli(vln), George Mraz(b), Roy Haynes(ds)
フランス人のピアノとヴァイオリンが織りなす音だから白くないワケがないのだけど、欧州まで行ってしまうと、白さにもまた違う味があるのだと思う。甘さが強くなる。

(2) Stefano Bollani    Les Fleurs Bleues (2001,Label Bleu)


Stefano Bollani(p), Scott Colley(b), Clarence Penn(ds)
今,気に入っているイタリア野郎、という表現がぴったりのピアニスト。弾け飛ぶような音楽感が楽しい。耽美ばかりじゃねえ。

6.エピローグ----- Fred Herschを
ジャズ会メンバーにも理解者がいるのだけど、Fred Herschはゲイを公言し、既にAIDSを発病。死の淵に立っているピアニスト。
(1) Fred Hersch: Alone At The Vanguard (2011, Palmetto)


piano solo
昏睡が伝えられたHerschなのだけど復活後のライヴが届けられた。

(2)Fred Hersch: Thelonious (1998, Nonesuch)


piano solo
Monkの頓狂でヒップな曲、つまり黒い溶液を奪胎換骨し無色透明の結晶に。モンクの曲の美しさを改めて知らしめている。ジョビン曲集もそうだった...

(3)Herschが弾くクラシック曲を聴いてください。クラシックの演奏とのペアで
(a)Scriabinの24の前奏曲から、Vedernikov(原曲)とHersch(ジャズにアレンジ)を

(b)Ravelクープランの墓から、Vedernikov(原曲)とHersch(ジャズにアレンジ)を、おまけで小曽根真Gary Burton版も



もう酔っぱらいになっているよね。おやすみなさい。