K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ショスタコーヴィッチ自作自演集(ピアノ協奏曲ほか):もうなんて云おうか、転げる勢いの協奏曲

 

ショスタコーヴィチ自作自演集(Venezia)
CD1
①子供のノート(7つのピアノの小品) op.69(録音:1946年)
②24の前奏曲とフーガ第1番から第8番、第12番(1951、52年)
CD2
24の前奏曲とフーガ第13、14、16、20、22、23、24番(1951、52年)
CD3
③2台のピアノの為の小協奏曲 op.94(1956年)
 マキシム・ショスタコーヴィチ(ピアノ)
④ピアノ協奏曲第1番ハ短調 op.35(1957年)
 サミュエル・サモスード指揮モスクワ・フィル
⑤ピアノ協奏曲第2番へ長調 op.102(1958年)
 アレクサンドル・ガウク指揮モスクワ放送交響楽団

ボクがこのブログで取り上げるアルバムは、たいがいのジャズファンも惹きつけるのではないか、と思う。オトを聴く楽しみの路、感覚の表層から深層に至る回廊が同じじゃないか、と思うから。音の流れが突然変わるようなギアチェンジ感は,楽器の音の圧迫感に身を任せたり、ときとして皮膚感覚のような快感に浸る悦び。

このアルバムもそんな一枚。ショスタコーヴィッチはピアニストとしてもピアノの独奏曲である「24の前奏曲とフーガ」の自作自演が聴きたくて入手。これは、そんなに感銘しなかったのだけど3枚目のピアノ協奏曲がとてもいい。勢いを音にするとこんな感じ、といった録音。

2台のピアノの為の小協奏曲は親子共演。これも最初はゆっくりはじまる曲なのだけど,2分過ぎから蹴り上げたようにギアが入って、勢い良くピアノがはじけていく様がとても面白い。親しみやすい曲で、あっけらかんとした感じが楽しい。

つぎはショスタコーヴィッチ自身のピアノによる協奏曲二曲。ボクはプレヴィンやアルヘリッチがピアノを弾く一番をよく聴く。トランペットとピアノの協奏曲といった面持ち。このアルバムではピアノが弾けた勢い、もう破れかぶれの風、すごい。細かな傷とかモツレのようなことはどうでも良くて、とにかく勢いを聴かせている感じ。走れ、走れ。オーケストラはついてきていない部分もあるし、途中で緊張感が切れた風もある。だから余計にピアノが際立つのだ。

このアルバムには二番も入っていて、一番に劣らず楽しい。やはり勢いで転げるような感じで、作曲者の曲のイメージが徹底していておもしろすぎる。楽しい。最後の楽章で打楽器との鳴らし合いの面白さといったら。

このアルバムは録音もあんまり良くないのだけど、ショスタコーヴィッチ自身のピアノが楽しいから、本当に何回も何回も聴いている。あと最近入手して聴いているのは、バーンスタイン指揮でプレヴィンがピアノの一番、バーンスタインがピアノの二番をカップリングしたLP。もう少し洒脱な感じで楽しい。勢いもあるし。一番だけだったらEMIから出ているアルヘリッチの最近のライヴが勢い満点で録音もいいから面白い。あと最近はアムランのものも端正で流麗な感じの音で気持ち良く聴いている。

そんなことでジャズ専科の時代には考えられなかった「キリル文字」がジャケットに見えるアルバムが増えているのだ。ウラー!

ピアノ協奏曲1番第1楽章