K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

イワナの夏

7月に入ってから忙しい。そもそも、仕事の業務暦のようなことから、7月と1月は厳しい。それに加え、随分な書き物、業務の資金獲得の提案などなど。相当の圧迫感のなかにあって、折角の第二の人生の地、での生活が台無しだ。
相変わらず、隙間のような空き時間は沢に出かけ、竿を振る。その瞬間の竿先への集中が、心地よい。犀川の上流から源流、名前を変えて倉谷川へ行く。
7月最後の土曜は倉谷川へ。魚留めの滝を目指したが、出発が遅く、辿り着けなかった。もう一歩。6月に訪ねたときよりも魚影は薄く、随分と釣られた感じ。沢伝いに、小屋掛のブルーシートもあり、そんなものだろう。ただただ、もはや人の手が入らなくなった犀川源流地域の清澄な水流と戯れるだけ。濃い緑のブナの森から射し込む光が気持ち良い。月が原から随分行ったところで、ようやく2本あげた。イワナの魚体には水が投影されるのか、驚くほど淡い、真珠にような色合いに再び会えてうれしかった。

その夕暮れ、沈みゆく犀奥の山並みを眺めながら、そんな場所にいた自分が、とても非現実的なような気がした。


8月最初の土曜日は、犀川の上流部へ。仕事前の時間に竿を垂れる。k太師匠には瀬に上がってるよ、って言われるのだけど、ピンとこなかった。確かに、先週試してみると、瀬の緩い流れに流すと引っ張る奴がいる、と思う間もなく、バシャバシャと魚体が飛び出る。面白い。
いつものポイントからは、なかなか出なかったのだけど、瀬に流すと大きな引き、と暴れる音。右往左往する魚をゆっくり引き寄せた。30cmのイワナ。腕に感じた重さの余韻に浸った。そして、その前に釣った20cmを返せば良かった、って思った。風は緩いが、流れる汗を揮発させて、ひんやりとしていた。ふっと臭った毛物の気配も消え、その場所に立っていること、しか考えていなかった。