K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Misha Mengelberg: Driekusman Total Loss (1964/66) Last dateの影を追いかけている、から

Misha Mengelberg: Driekusman Total Loss (1964/66, Varajazz)
A1. Driekusman Total Loss 9:53
A2. Nature Boy 10:25
B1. If I Had You 11:14
B2. Remember Herbie 8:18
Misha Mengelberg(p), Piet Noordijk (as), Gary Peacock (b on A1 to B1), Rob Langereis (b on B2), Han Bennink(ds)
Recorded on 4 December 1964 (A1-B1) and 28 June 1966 (B2) at VARA-Studio in Hilversum.

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 このアルバムについては、銀座のバーB2のブログで拝見して、入手しなかったことを苦々しく思い出したもの。

 上記リンク先に、どのようなアルバムか詳しく書いてあるが、ミシャとベニンクは、このアルバムの半年前にドルフィーのLast Dateで共演している。あのアルバムの音空間の構築のなかで、モンクという僭主を十分意識させる役割を担っているのはミシャ。ドルフィーの音もモンクと曲との相性が良く(要は奇妙な感じがぴったり)、彼らの交差の接点であの録音ができあがっている、と思う。ベニンクのタイム感覚も微妙なゆれ、のようなものがあって、それが昂奮を累算していくような効果があって、臨界点で愉悦が溢れる。

 だからミシャとベニンクの60年代の録音、決してフリージャズという訳ではないのだけど、ドルフィーがフリー・ジャズではないのだけど音の感触に前衛性を纏っているように、ミシャとベニンクにもそのような匂いを感じるのだ。勿論、同じことはモンクにも云えるのだけど。このアルバムでは、更にゲイリー・ピーコックも参加している(チェリー、アイラーらと欧州ツアーだったらしい)。悪いわけはない、というB2の主人と同じように思うのだ。

 さて聴いてみると、さすがにLast Dateのような強度はない。ミシャのタッチが弱く感じることもあって、その点は少し残念。しかし、ピーコックのソロが存外に多く、図太く、しっかりとしたビートでありながら、音の振れの大きな演奏を聴かせてくれる。なかなか良い。サックスのNoordijkがフィル・ウッズのような直球の演奏なので、陰翳に乏しいのが残念なんだけど、いいアルバム。まあ、Last dateの影を追いかけている、からなのだけど。

 このアルバムの発売は1980年。そのタイミングを明瞭に記憶している。なぜなら、当時ディスクユニオンはDIWというレーベルを立ち上げ、初期は日本盤がない小さなレーベルを取り上げ(OWLとかSoul Note)、輸入盤にライナーノートを足して、販売していた。そのなかの一枚、このアルバムは。当時、ミシャは好みだったから、買おうかどうしようかと悩んだのだけど、内容がimprovised musicじゃないという理由で見送り。まだLast Dateを聴いていなかった時期だったしね。あとで、このアルバムを思い出し、なかなか入手できなくて、そしてB2のブログを見て火が付いた訳。

 結局、オランダのsellerから微妙な価格で購入、なのでした。買って良かったなあ、これも。