K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Victor Modern Jazz Sextet: Matrix (1969) 彼のラストアルバム(発売予定)との不思議な一致

 菊地雅章の「幻の初リーダ作」と銘打ち、昨年、LPレコードで再発されたアルバム。だけど、これ初リーダ作かなあ。

 ライナーノートをみると沢田駿吾(ギター)がプロデューサ的な役割で、菊地秀行(as),滝谷裕典(b),鈴木孝広(ds)が沢田駿吾のバンドのメンバー。日本ビクターの「商業的な要請」に従って沢田がコーディネイトしたバンド、のようである。そのなかで芸大中退、バークリー帰りの(と解説されている)菊地雅章が編曲と、2曲のオリジナルを提供。チック風、マイルス風、B面のジャズロックはハンコック風。日本のジャズもなかなか聴かせるね、って感じで仕上げられている。菊地雅章の編曲能力の高さは感じるのだけどねえ、と思う。

 ただA面2曲目のリトル・アビーは後年のリトル・アビの初吹き込み。この曲のリリカルな仕上がりは聴く価値があると思う。かなり惹き付ける。日本のジャズが独自性をもって開花する寸前のドキュメント、だろうと思う。

 ここまで書いて、彼のラストアルバム(発売予定)との不思議な一致、に気がついた。5月に、2012年の彼の最後の公演(東京)がECMから発売される予定である。全般的には即興であるが、2曲は題名が与えられている。アルバムタイトルでもある「黒いオルフェ」と「リトル・アビ」。このアルバムと見事な対比となっている。意識した選曲なのであろうか。彼のアルバム上での43年間の、はじまりとお仕舞い、が同じ曲なのである。

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Victor Modern Jazz Sextet: Matrix (1969, Victor)
A1. Matrix
A2. Little Aby
A3. On Green Dolphin Street
B1. If I Said The Sky Was Falling
B2. In Fourth Way
B3. Black Orpheus
菊地雅章(p),伏見哲夫(tp),菊地秀行(as),西村昭夫(ts),滝谷裕典(b),鈴木孝広(ds)