K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

菊地雅章: But Not For Me (1978) 好きすぎてCDでも

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菊地雅章: But Not For Me (1978, Flying Disk)
A1. Sunday Lunch (菊地雅章) 8:48
A2. Pastel(菊地雅章) 4:37
A3. Pumu : #1 (Gary Peacock) 6:32
B1. Circle Dance (菊地雅章) 5:44
B2. Pumu : #2 (Gary Peacock) 6:03
B3. A Leaf (Masabumi Kikuchi) 9:48
菊地雅章(p, perc), Gary Peacock(b,perc), Al Foster(ds, perc)
Badal Roy(tabla), Azzedin Weston, Alyrio Lima(perc)
Engineer: Tony May
Master: Tohru Kotetsu
Producer: 伊藤潔, 菊地雅章
Recorded on Sept. 4,6,8,9,11, 1978 at Generation Sound Studios

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好きすぎて、レコードだけでなくCD入手。仕事場で無限ループ。
アコウスティックなポリリズムが凄まじく格好いい。ピーコックのベースも滋味たっぷり。ああ素晴らしい。

画像

[2019-05-06]スストの前哨戦

菊地雅章が隠遁していたマイルスとのセッションを行った後のアルバム。

 ボクにとって、好きなジャズアルバムのなかでも上位に位置するのはマイルスの「アガルタ」とともに菊地雅章の「ススト」。漂い循環するような異形ファンクの快感指数は高い。

決してマイルスの「アガルタ」の突然変異的なものではなくて、アガルタを含め時代の音ととして、ボクのなかでは響いている。だからスストもアガルタも続編あるいは進化形がなく残念な気持ちでいる。スストの続編がない訳ではないが、AAOBBの不発感が残念なのだ。

聴いた瞬間、But Not For Meがスストの前哨戦だと思った。あの音の感触が詰め込まれている。

このBut Not For Meには、スストのようなエレクトリック・ファンクのような味はない。菊地のアコウスティックピアノ、ゲイリー・ピーコックのアコウスティックベース、アル・フォスターのドラムによるトリオをベースに、打楽器とターブラがビートに色彩感を与えている。循環するビートの上での菊地とピーコックの応酬が続くが、ミニマルというほど単純ではない、循環する音のなかでインプロ的なグループ表現が続く様子は、スストの原形で実に面白い。

菊地雅章のアルバムは、ストイックなほど音が選ばれている感じが聴き手にも緊張感を与える。それが良いとも云えるし、聴くのが辛いとも云える。アヴァンギャルドな音を出さずとも、そんな印象を与えることが多いのだ。しかし、このアルバムでの明るさ、見通しの良さ、のようなものは何だろう。キャリアのピークを迎えた菊地雅章の余裕、ではなかろうか。とても愉しく聴くことができるのだ。

あわせて録音が非常に良い。場所はGeneration Sound Studiosで、技師はTony May。そうECMの米人奏者が吹き込む環境。しかしマスタリングが違うだけで、ECMとは随分違う。すかっとした高ダイナミックレンジの明澄な音は聴いていて嬉しい。沢山入った打楽器の背景音が雑音にならず、音のひとつひとつがクリアだからね。

バット・ノット・フォー・ミー

バット・ノット・フォー・ミー