K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: Some Other Time (1968) 改めて聴き直す

 どうも肯定的には書いていない前回の内容が気になっていた。ゆっくり聴き直したい、と思っているが、時間があまり取れない。

 そんなことを思っているうちに気がつくと6月。あまり昂奮せずに平常心でレコードをターン・テーブルにおいてみる。あまり前提条件を置かずに聴いてみる。かなりの意図をもって、ドラムはオフ気味であるが、だから穏やかなアルバムに仕上がっている。未発表録音と呼ばれるモノの大半はライヴ音源なので、そのような臨場感の期待が知らぬうちに、あったのかもしれない。平常心で聴くと、本当にしっかりと録音されたスタジオ録音。

 1枚目でいうとI’ll Remember AprilやMy Funny Valentineのようなスタンダード曲よりは、Very Earlyのようなエヴァンスらしさを感じさせる曲がやはり良かった。明らかなミステイクまで丁寧に収録されている。そのあたりを整理し、(本来の意図であろう)LP1枚分にうまく編成したら、素晴らしいアルバムになったように思う。

 録音はやはり少し残念。だからLPレコードは物体としての存在感がディジタル・データより遙かに強い一点において価値があり、音の優位性(音圧の強さとか、奏者との距離感の近さ)はあまり感じなかった。その差異よりも、マスタリングのときのイコライズが強い、ということかなあ、と思う。

 聴く価値は勿論あるし、CDのようなディジタルデータから自分なりに選曲し、LP1枚分の時間の、自分だけのアルバムを作ってみたらどうだろうか、ヨヒアム・ベーレントにかわって。きっと素晴らしいアルバム、自分にとって、ができるのではないだろうか。そんな「音源集」なのである。

 

[2016-4-12記事:期待が膨れたところでブツが届いた]

 随分悩んだが、LPレコードで入手することにした。偏執狂的な蒐集家では決してないので、まあいい加減である。

 とは云え、後で欲しくなるとベラボウにコストがかかるのは間違いない。ただ最近は、学生の頃に聴いたFree Jazzに再び気持ちが動いているので、感動は足りないだろうな、とは思っていた。音の受け手の個人的な事情としては。

 順序が逆になったが、このアルバムは最近いい感じで「発掘音源」をヒットさせているResonanceの驚愕のアルバム。あの名盤、モントルーのビルエヴァンス・トリオの5日後に西独MPSのスタジオで吹き込まれたもの。期待しないほうが無理だろう。

 モントルーが名盤となった要素は、ジャック・デジョネットのタイトなリズムが、ビル・エヴァンス・トリオに過去にない緊張感を与えていること、そしてそれを鮮明に伝える録音の良さ、じゃないかと思う。ジャック・デジョネットは、ロイドのグループでキースと共演した後で、マイルスのグループでチック・コリア、デイブ・ホランドらと欧州ツアーに出る1年前。競り上がるようなリズムを叩き上げている頃。それがエヴァンスのピアノと不思議なほど調和し、とても締まった演奏になっている、と思う。Four&Moreのトニー・ウィリアム(のシンバル)に感じるような新しさ、をデジョネットのシンバルにも感じる。だから、モントルーでの1枚しか、このトリオが吹き込まれていないことは、とても残念だったのだ。

 そして、このトリオによるLP2枚分の演奏が、素晴らしい録音が多いベーレントのMPSで吹き込まれた事実、に期待しないほうがおかしい。大いに期待した。期待が膨れたところでブツが届いた。

 まず残念なのは音質。決して悪くはないのだけど、MPS特有の澄み切った乾いた音ではない。中音域から低音を強調したようなイコライズが、全体的にもっさりした感じ。そしてゴメスのベースが全面に出てきて、エヴァンスと激しいインタープレイをする、といった意図でマスタリングされている(ハリウッドでマスタリング)。シンバル・ワークが美しいデジョネットのドラムがオフ気味。要はエヴァンスとゴメスのデュオに、小さくデジョネットが添えられた感じ。そんな訳で肩すかしにあったような、感覚である。演奏自体も抑制的で、躍動感はあまり感じない。

 少し後で聴き直したい、と思う。多分にヴェクトルの異なる期待で、聴く耳を持てなかったように思う。素直に聴けば、いいアルバム(に違いない)。

 まあ、そんなことで、2枚聴き終わると少々疲れて、加古隆と高木元輝のパリでのライヴなんかを聴いてほっとするのは、何だか精神状態がよくないなあ、とも思うのだ。トホホ。

追記:

少しデジョネット云々を忘れて聴くと、普通にいいアルバム、だと思う。

参考記事:

奇跡の掘り起こし盤 『Some Other Time / Bill Evans』: My Secret Room

Some Other Time/Bill Evans: ジャズCDの個人ページBlog

Sankt Gerold/Paul Bley, Evan Parker, Barre Phillips: ジャズCDの個人ページBlog

 

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BILL EVANS: Some Other Time- The Lost Session from The Black Forest (1968, RESONANCE RECORDS)
[Disc 1]
A1. You Go To My Head (4:58)
A2. Very Early (5:12)
A3. What Kind of Fool Am I? (5:21)
A4. I’ll Remember April (4:08)
A5. My Funny Valentine (6:58)
B1. Baubles, Bangles & Beads [Duo] (4:38)
B2. Turn Out The Stars (4:56)
B3. It Could Happen To You (3:58)
B4. In A Sentimental Mood (4:18)
B5. These Foolish Things (4:14)
B6. Some Other Time (5:28)
[Disc 2]
A1. You’re Gonna Hear From Me (3:32)
A2. Walking Up (4:10)
A3. Baubles, Bangles & Beads [Trio] (4:51)
A4. It’s Alright With Me [Incomplete](3:45)
A5. What Kind Of Fool Am I? (2:51)
B1. How About You (3:59)
B2. On Green Dolphin Street (4:33)
B3. I Wonder Why (4:13)
B4. Lover Man (Oh, Where Can You Be?) (3:49)
B5. You’re Gonna Hear From Me [Alternate Take] (3:24)
Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Jack DeJohnette (ds)