K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Peter Evans: Ghosts (2011) 惰性のもとにある意識を振り落とす

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   このアルバムがbandcampにアップされた。非圧縮の美しい音で楽しむことができる。改めて聴いているが、実に素晴らしいアルバム。伝統的なジャズのビートで聴き手を油断させるが、はっと気がつくと、そのような惰性のもとにある意識を振り落とすような逸脱、を見せつける。

[2016-10-19]異様な美・変調される世界

 凄いアルバム。apple musicで何回も何回も聴いているが、ボクのなかでの破壊力が強くて、すっかり参っている。

 全くアヴァンギャルド な匂いもしない、正統的なジャズのような装いからはじまり、終わる。僅かに顔を出す、パラレル・ワールドのような奇妙な世界。昨日までの音世界が、卵のように薄く脆い殻の上に投射された幻影であるかのように、細かな破断線から崩れようとする。崩れる瞬間、それも幻影のようであり、夢のように覚める。

 美しい金管は、大きな音響的な質の振幅の中で、静かに狂っている。ジャズ的なものをビートに委ねながら、エレクトロニクスが音を熔解させていく。異様な美・変調される世界が、コマ落としの幻灯となって、目の前を通り過ぎる。

 メアリー・ハルヴォーソンがギターに「変調」をかけたように音を屈折させるとき、垣間見える「あの世界」に通じる奇妙な感覚。

  それにしても美しい。その過半が金管の音響にある、それも大きな魅力。溜息とともに、ここ数日参っている。

Ghost

Ghost

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Peter Evans: Ghosts (2011, More Is More Records)
1. ...One To Ninety Two 14:55
2. 323 9:19
3. Ghost 5:35
4. The Big Crunch 2:55
5. Chorales 7:29
6. Articulation 14:38
7. Stardust 2:41
Peter Evans(tp), Carlos Homs(p), Tom Blancarte(b), Jim Black(ds), Sam Pluta (Electronics)