ミシャとハンの組み合わせの面白さ、は、伝統的なジャズというよりは、(多分)欧州の路上芸とか大衆芸能に根ざしたような非米的なタイム感覚が起こすジャズとの「摩擦熱」のような感覚だと思う。だから4ビートを叩いても、そこには「奇妙な感覚」が付きまとい、それでいて只事ではないドライヴ感を出すものだから、とんでもない快楽を運んでくる。
それはドルフィーとのラスト・デイトにしてもそうだし、後年のICPのアルバムでもそうだ。それは一貫した彼らの魅力だ。
だから、このアルバムは大期待で、Last DateのHypochristmutreefuzzを取り上げたり、モンクの曲を取り上げたり。そして管奏者がデイヴ・ダグラスという非欧州。そこに何か生まれるかも、と思った訳だ。
残念なことにデイヴ・ダグラスは彼らの「アク」というか「個性」を前に、闘う訳でも、合わせる訳でもなく、ミシャのフレーズをなぞるような、戸惑いのプレイ。アルバムを薄める効果、しかなく残念。あまりに異質なのだろう、彼のレンジの狭さ、を知った。
その点を除けば、ミシャとハンのアルバムとしては面白い。フリー・ジャズと伝統ジャズ(といってもモンク、ドルフィーだけど)の接合点をクスグルような、行き来があって、そのコソばゆさ、が快感。
面白いのは、やはりモンクやドルフィーの「奇妙な味」の継承者は間違いなく非米人である彼らじゃなかろうか、ということだ。
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Misha Mengelberg: Four In One (2000, Songlines Recordings)
1. Hypochristmutreefuzz(Misha Mengelberg) 4:41
2. Reef(Misha Mengelberg) 3:53
3. Kneebus(Misha Mengelberg) 7:13
4. Die Berge Schuetzen Die Heimat(Misha Mengelberg) 2:58
5. Four In One(Thelonious Monk) 4:47
6. Monk's Mood(Thelonious Monk) 8:02
7. Criss Cross(Thelonious Monk) 5:27
8. Blues After Piet(Misha Mengelberg) 8:44
9. Kwela P'Kwana(Misha Mengelberg) 5:24
10. We're Going Out For Italian(Misha Mengelberg) 5:48
11. Poor Wheel(Misha Mengelberg) 2:12
Misha Mengelberg(p), Dave Douglas(tp), Brad Jones(b), Han Bennink(perc)
Recorded September 26, 2000 at Avatar Studios, NYC.