K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

中島敦作品集(Kindle) その滋味が

『中島敦作品集・31作品⇒1冊』

『中島敦作品集・31作品⇒1冊』

 

Kindleでフォントを拡大し読むと、老眼にも優しく、とても快適だ。数多くの著作権切れの著作がデータ化され、それがまとめられて電子書籍化され、廉価だ。気になる物を幾つか購入。これは、その1つ。

 漢籍に強く、南洋庁勤務の小説家としか知らなかったが、最近、鉄道での移動中に読み始め、面白味を感じた。それは敗者・消えゆくものへの愛惜、温かい眼差し、かと思う。前世紀の遺物のような老学者、帝国日本の植民地(南洋、朝鮮)の人々、猟官に敗れた人々、小説の脇役、そのような存在に何を仮託していたのだろうか。

wikiで経歴を見るが、東京帝国大学卒業のエリートではあるが、病弱であり、生前、何者にも成り得なかった筆者。それを投影しているのだろうか。33歳でこの世を去る1年くらい前から作品は出版され、そして没後にも多くが世に出ている、とのことだ。

子供の頃に沙悟浄モノを教科書で読んだが、面白くなかった。やはり何者にも成り得なかった、ということを深く感じる老年期への入り口で、その滋味が分かるのだろうか。