K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Miles Davis: Bitches brew

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Miles Davis: Bitches Brew (Columbia)
A. Pharaoh's Dance (J. Zawinul) 20:07
B. Bitches Brew (M. Davis) 27:00
C1. Spanish Key (M. Davis) 17:30
C2. John McLaughlin (M. Davis) 4:23
D1. Miles Runs The Voodoo Down (M. Davis) 14:03
D2. Sanctuary (M. Davis, W. Shorter) 10:54
Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ss), Bennie Maupin(b-cl), John McLaughlin(g), Chick Corea, Joe Zawinul (el-p on A to C1, D2), Larry Young (el-p on A, C1 to D1), Dave Holland(b), Harvey Brooks(el-b), Don Alias, Jack DeJohnette, Lenny White(ds), Jim Riley(perc)
Artwork [Cover] – Mati Klarwein
Design [Cover]: John Berg
Producer: Teo Macero
Released: Jun 1970
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よく考えると、昨年はこのアルバムの収録から半世紀。ジャズを聴きはじめた頃、同じ年代はじめの問題作として語られていたのだから、歳は取るものだ。

様々な側面で語られた、

ジャズじゃない、電化マイルス、クロスオーヴァー(フュージョン)のはじまり、などなど、

そんなアルバムなのだけど、これだけ時間が経って、時間軸上は鳥瞰して聴くことができる今、ゆっくりと聴いてみると、どれもがYESでありNOでもある、ように思えた。

とにかく良く作り込まれたアルバムで、実に管の響きも、打楽器の響きも、鍵盤楽器の響きも、溶け込んで柔らかく美しい。In a silent wayの後に聴くと、その連続性、発展性に眼を見張るが(特に多様性を獲得した律動に)、不連続的な問題作とは全く感じない。美しい旋律、案外淡いグルーヴ感が気持ちよく、2枚組があっという間。驚き、はなかった。

しかしハッと気がつくのが聴き手は、1979年の自分ではない。21世紀に入って20年も過ぎようとしている今、なのだ。全くもって今時の音のように聴こえるBitches brewは、半世紀mk前に現代のジャズの在り方、grand  designのようなものを示している。

フォームでジャズを縛らないこと、電子的な手段の利用による音の多様性の獲得、安易なジャンルの定義を受け付けないこと、音響的な空間の作られ方、作曲行為の高度化、複雑化などなど。

そんなことが極めて自然に提示されているが故に、発表後10年後では、その意味が消化されていなかった、のだろうな。

この音の多様化の芽が沢山含まれたアルバムが、直線的な進化論で語られたがちであったジャズを解放し、何でもありの多様な音の森を生み出した、ように思える。主流も周縁もない、フラットな音の見取りの中に、ジャズは相対化されていく。旧来的なジャズの解体新書だ。

実はbitches  brewよりも、装飾を削ぎ落としたファンク、アヴァンギャルドな匂いが強いファンク、である1975年のライヴバンドの方が圧倒的に好きだ。しかし、割と気軽に、本当に久しぶりに聴いた本作の豊穣な多様性の森、のような在り方を感じてしまった。だから、1970年代後半でのフュージョンのはじまり的な言説のなかにあったことを思い出し、可笑しくなっているのだ。

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入手盤は初期の2eye。インナーも多分当時のもの。ポップスター、ロックスターと同じように並べられている。

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