Paul Motian: Sound Of Love (1995, Winter & Winter)
1. Misterioso (Thelonious Monk) 13:27
2. Duke Ellington's Sound Of Love (Charles Mingus) 9:13
3. Mumbo Jumbo (Paul Motian) 7:31
4. Once Around The Park (Paul Motian) 6:52
5. Good Morning Heartache (Dan Fisher, Erwin Drake, Irene Higginbotham) 8:59
6. Epistrophy (Liaquat Ali Salaam, Thelonious Monk) 7:15
7. Play (Paul Motian) 6:08
Paul Motian(ds), Joe Lovano(ts), Bill Frisell(g)
Engineer [Mastering] : Adrian Von Ripka
Engineer [Recording] : Joe Ferla
Producer: Stefan Winter
Recorded live at the Village Vanguard, NYC, June 7-10, 1995.
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凄く良いアルバムだ。Sound Of Love、ジャズへの愛に溢れている。1930年代はじめに生まれたモダン・ジャズの黄金時代の奏者と20年遅れのポスト・モダン?の奏者が、過去から今までのジャズの音を結びつけている。場所は、モチアンが「あのセッション」で叩いたヴィレッジ・ヴァンガード。21世紀を目前とした1995年のライヴなのだけど、今のジャズへそのまま繋がっている。
Organizerとしてのモチアンが、フリーゼルとロヴァーノを全面に出して、時間を越えた音世界を造っている。もう冒頭のモンクの曲から、モンクの曲が持つ解読不能な謎のような世界が時間を越えて21世紀へと美しくtranslateされる。フリーゼルの耽美的な音が最大限引き出され、それと相対するロヴァーノの粘着も美しい。
いつだったか、マンハッタンのブルーノートで聴いたロヴァーノにガッカリした記憶があるのだけど、ここでは抑制気味ではあるが、それがモチアンのバンドの味とよく整合している。
ああこういう聴き方をする奏者ね、って、最近のECMのアルバムとあわせ、ようやく分かった。
蛇足なんだけど、なぜだかね、このアルバムを聴きながら、田村隆一の最後の詩集の一節を思い出したんだな。彼は21世紀まで生きなかったが、21世紀を睥睨した。
さよなら 遺伝子と電子工学だけを残したままの人間の世紀末――1999
モチアンは生き延びて、ジャズの21世紀を睥睨した。
ここのところ、モンクとエヴァンスのRiverside盤ばかり聴いていたので、1950年代後半−1990年代後半−2020年代と、頭の中で時間が乱れたような気がした。