K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM 1733) Annette Peacock: An Acrobat's Heart (2000) ジャズのミューズCarla BleyとAnnett Peacock

ジャズにミューズ、という言葉は似合わない感覚がある。ジャズは男の世界、のような暗黙の了解があった、ように思える。今や遠い過去の話だが。

例外的に1960年代後半からのカーラ・ブレイとアネット・ピーコックの存在は、ミューズそのもののように感じる。ブレイに関してこの感覚は、米人の友人(Baby boomer)ともきっちり共有できていて、笑ってしまった。いや、最近の日本でも渋谷毅や吉田隆一が彼女の楽曲を取り上げていて、確かに曲の良さ、だけではない彼女の存在のありよう、を思う。カーラは最後まで、そんな感じであの世へ去った。

さてアネットはどうしているのだろうか。かつての二人のパートナーであった、ポール・ブレイは晩年まで二人の楽曲の素晴らしさを粘着するかの如く伝えてくれた。カーラ・ブレイに劣らず、彼女にもミューズ性を感じてします。多分にポール・ブレイの刷り込み。

このECMのアルバムはアネットのミューズ性を余すことなく捉えている。そのために存在している。1969年に設立されたECMの、初期の骨は間違いなくポール・ブレイの1960年代後半の演奏。そこから組み上げられた音響空間が成熟し尽くした2000年、それがあたかもアネット・ピーコックのために準備されたような、そんな印象を与える素晴らしいアルバム。

それがレコードで出て嬉しい。夜半にそっと針を落としたい。


[2020-1-3] 静謐な空気感

ANNETTE PEACOCK / アネット・ピーコック / Acrobat's Heart(2LP)

(ECM 1733) Annette Peacock: An Acrobat's Heart (2000)
1. Mia's Proof(Annette Peacock) 5:24
2. Tho(Annette Peacock) 5:24
3. Weightless(Annette Peacock) 4:42
4. Over.(Annette Peacock) 3:52
5. As Long As Now(Annette Peacock) 3:49
6. U Slide(Annette Peacock) 4:17
7. B 4 U Said(Annette Peacock) 4:42
8. The Heart Keeps(Annette Peacock) 3:08
9. Ways It Isn't(Annette Peacock) 3:50
10. Unspoken(Annette Peacock) 2:59
11. Safe(Annette Peacock) 3:29
12. Free The Memory(Annette Peacock) 4:36
13. , Ever 2 B Gotten.(Annette Peacock) 2:53
14. Camille(Annette Peacock) 4:50
15. Lost At Last(Annette Peacock) 2:18
Annette Peacock(p, voice)
Cikada String Quartet (Ensemble): Morten Hannisdal(Cello), Marek Konstantynowicz(viola), Henrik Hannisdal, Odd Hannisdal(vln)
Design: Sascha Kleis
Photograph[Annette Peacock]: Alastair Thain
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Recorded January and April 2000
Rainbow Studio Oslo
Released: 18 Sep 2000
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ECMとアネット・ピーコックの距離感は、人間模様からの近さ、以上に、音的に擦れ違っている印象があった。シンセサイザ・ショウでのサイケな電子音や、その後のアルバムでの味がそのような印象を作っていた。

実は2000年にこのアルバムが出ていることを知らなくて、数年前にDU新宿の棚で見つけて大いに驚いた。勿論、持ち帰った。その後、随分と放置していたのだけど、最近はふっと聴くことが多い。頭の中で一緒にグループ化されているカーラ・ブレイよりは頻度は低いのだけど。

それにしても、このアルバムでの静謐な空気感は何だろう。アネットの自作曲の弾き語り。やや擦れ気味の声質はとても好み。広い空間のなかで弦楽とともに呟きのような唄が流れる。ECM的としか云いようのない深い空間。激しい1970年代を経過し、1980年あたりから後のアルバムはこんな空気感のようだ。いいなあ。アネットのレコードが気になってきた。

An Acrobat's Heart

An Acrobat's Heart

 

参考情報:
 https://jazz.txt-nifty.com/kudojazz/2007/02/an-acrobats-hea.html