K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: You Must Believe in Spring (1977)独盤との聴き比べ、そして

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Bill Evans: You Must Believe in Spring (1977, WEA)
1. B Minor Waltz (For Ellaine)
2. You Must Believe In Spring
3. Gary's Theme
4. We Will Meet Again (For Harry)
5. The Peacocks
6. Sometime Ago
7. Theme From M*A*S*H
Bill Evans(p), Eddie Gomez(b), Eliot Zigmund(ds)
Engineer [Recording & Remix]: Al Schmitt
Mastered by Doug Sax
Producer: Helen Keane, Tommy LiPuma
Recorded at Capitol Studios, Hollywood, CA, August 23, 24, 25, 1977.

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ルネ氏のブログを拝読し、ずっと欲しかった独盤を入手した。

Bill Evans - You Must Believe In Spring (1981, Vinyl) | Discogs

Discogs情報だと、ラッカー盤だけが独製のようだけど、実際どうだろう。

同時の米盤は最低品質の時代だから、そりゃ独盤のほうがいいよね、って感覚。

スペインのディーラーから入手したのだけど、コロナ禍のために国際郵便の停止なんかもあって、昨日ようやく届いた。

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昨夜遅く、音量を落として聴くと、独盤のほうが低レベルであること、以外はよくわからなかった。ピアノの音は殆ど同じ。盤を比べてみると、WBによる米盤と当時としては極めて良質。盤の重量も独盤より若干重いように思った。

今朝になって、アンプをゆっくり暖め、音量をしっかり出すと、その差は歴然だった。米盤は高レベルだけでなく、ベース、ドラムが前に出て、かなりピアノに被ってくる。特にベースの増幅音が気色悪い。ああゴメスあかんなあ、と思う「あの音」なのだ。それが被さる。多分、CDよりもキツイように思える。一方、独盤はドラムはかなりオフ気味だけど、それが良い。背後に退いている。ベースも一歩退いていて、嫌な電気増幅音は軽減。(後からルネ氏のブログを確認したら、同様の記載でほっとした。)

昨夜は、独盤だからピアノの透明度かなと思ったのだが、実はそんな違い。

ついでに、そのような観点でディジタル音源を聴くと、

ボーナストラックなしCD(古い)<<ボーナストラックありCD(新しい)=AMAZON HD

という結果だった。

 

そんな話はともかく、独盤、米盤を2回くらいずつ聴いたが、同じ晩年の演奏と行っても、1980年の亡くなる直前のライヴ(マーク・ジョンソンとの共演)とは随分違う。そして、こっちのほうが好みかな。最晩年と比べ、内在する律動の速度そのものや揺らぎが少なく、落ち着いた演奏。聴く側に迫り来るような圧迫感はない。だからピアノや曲の美しさに気持ちを委ねることができる。detailまで丁寧に創られた音を愉しむことができる。勿論、全体に陰翳は感じるが、同時に淡い光もある。そんなバランスの良さが良い。

先日はキーストンコーナーでのライヴを聴いたが、あれは迫力があるのだけど、キツいといえばキツい。

改めてエヴァンスの晩年の代表作はこれだな、と思う。何で当時、エヴァンスが完全に過去の人になっていたのか、不思議なことだ。

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You Must Believe in Spring

You Must Believe in Spring

  • アーティスト:Evans, Bill
  • 発売日: 2003/10/27
  • メディア: CD
 

 [2010-09-25]

最近は自分でも恐ろしくなる勢いでクラシック、それも20世紀のピアノ音楽を中心に聴いている。この一ヶ月でディスクユニオンやAmazonで入手したLPやCDは120枚を超える。とは云え、全部は聴ききれていないのだが。

ジャズも勿論、聴いていない訳ではないが、クラシックの濫入で脳内快感センサーが変わってしまったので、結構聴き直している。そんな中で面白いのは、Bill EvansやKeith Jarrettは若い頃の演奏でなくて、加齢してからの演奏が気持ちよくなった。Bill Evansの場合は70年代の演奏のほうが、ピアノをとても綺麗に鳴らしているように思える。だからLaFaroとのRiversideの「名盤」には、あまり感じなくなってしまっている。

Bill Evansが亡くなったのが1980年。ボクがジャズを聴きはじめて2年目の秋の頃。春過ぎにBill Evans来日公演のアナウンスがあったのだけど、ボクはチケットを買わなかった。その頃の雑誌ジャーナリズムでは過去の人、LaFaroとのRiversideの名盤を聴け、って感じで。来日公演がキャンセルされ、亡くなったニュースが流れたときも、なにか過去の人が亡くなったような、不思議な感じがしたことを覚えている。あれから30年。

いつの頃からか、AffinityとかYou Must Believe in Springのような亡くなる前の何枚かにすごく惹かれている。音の綺麗さと、まとわりつく哀感が香気を放っているように思えるのだ。その頃Bill Evansの身近な人たちが自裁し、消えていったこと、本人が随分な麻薬中毒であったことを知って、曲名We Will Meet Again (For Harry)にはグッとくるものがある。それにしても、50才にして死と向き合い、それを昇華させたような美しい曲・演奏を残す心境とは、どのようなものなのだろうか?レコードをターンテーブルに載せるたびに、そのようなことが頭をかすめる。そして、その彼が去った年齢に近づき、抜き去ろうとしてしていることに悄然とすることがある。意味もなく。

決してそんなことは関係なく、針を盤に落とした後には毎回、何かしら演奏と内的に対峙したような気分にさせられる素晴らしい一枚なのだ。秋がやってきて、しんみりとする宵があってもいい。