K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

ボクがタイに惹かれるワケ(1):バンコクの甘い香に想う(昨冬)


月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯をうかべ馬の口とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして旅を栖とす。

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今日(5/16)の日経一面のコラム「春秋」をみたらバンコクについて書かれている.梅棹忠夫下川裕治を引用し,日本の街と似た親しみ,治安の良さ,不寛容を強める日本との対比などでバンコクの魅力を紹介し,現下の混乱を憂慮して締めくくっている.全く同感なのだが,ハテ,ボクは何でバンコクが好きなんだろうか,と考えた.仕事での初渡航が2007年.仕事で関係した生産拠点で品質不良が多発し,その生産改善の責任者になってしまい,1年のあいだに12回(PEXなので二泊三日の出張),つまり月例会議を行ったのがはじめて.最初は香草(パクチー)の匂いに耐えられなかったのだが,気がつくととっぷり魅力を知ってしまった.その後,知り合ったタイの大学とイベントを打つことになって,いまでも2回/年のペースででかけている.GW明けも渡航予定でチケットも発券していたが,やむなくキャンセル.とても哀しい.

街中にお堂があって老若男女が手を合わせ,プミポン国王のご真影が街に溢れる.道路には物乞いや物売りが並んでいる.ボクが子供の頃,といっても昭和40年頃の日本の光景とオーバーラップするのだ.日本があの戦争を行わなかったら,似たような国になっていたのではなかろうか.

あとは,昨冬の渡航後のメモを.速やかな解決を祈っている.
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木曜日,シンガポールからバンコクには随分遅い時間についた.いつものことだが,パクチーの仄かな香が漂っている.ぼくは,これにすっかり参っているのだ. とても甘い記憶となって包んでいる.

[空港にて]

仲間内でタイ王国フアンが増殖中なんだが,分かれ目はパクチの香り.これが大丈夫な人は皆,熱いファンになって帰っていく.昔の祖父の家と同じ空気.時間がゆっくり,人々は辻の神仏にゆっくり手をあわす.国中に御真影.戦前の日本を動態保存したようなところ.

馴染みのホテルに入ったのは23時過ぎ.12月のこの地は一番涼しい.ホテルがあるスクンビットの11番通りには,屋台バーが並んでいた.驚いた.金を使わない西洋人旅行者で溢れていた.

そのあとは,同じ11番通りの奥にある,なじみのヒラリーズバーで.久しぶり,と交わす挨拶がたのしい.

金曜日はバンコク郊外で仕事.タイの知人と来夏の行事について打ち合わせた.決して自己主張は強くないが,云うべきことを穏やかに主張する彼らを,僕は強く尊敬している.

タイの人たちは温厚で感情を剥き出しにしないことが多い.面子を互いに大切にしているそうで.現地企業の駐在員に聞くと,多くの面前で叱ると,面 子を壊したことになり,時として撃たれることもある,そうだ.外見と違い,内は熱い人たち.タクシン絡みの騒乱をみてもそうだが.

仕事の後,旧知のタイ人,日本人で集まって食・呑.そんなに大きくない川の河畔のレストラン.


釣りのボートが漂っている.

ゆっくりとした時間のなかで,夕暮れが急ぎ足で走ってくる.


ライトに河畔から沸き立つ昆虫の影が.木には大雑把な電飾がささやかにぶら下がる.フォークソング風弾き語りを聴きながら,香草の甘い香りでビールを呑み 続けた,




大きな音をたてて,暗闇の中.エンジン付ボートが走り去っていった.そんなに急いでどこへ.


こんな記憶が甘い残り香となって,身体に溜まっていく.そんな気持ちを抱いて,タイの友人達には再開を約束し,わかれた.