Gary Peacock: Tales of another (1977, ECM)
A1. Vignette
A2. Tone Field
A3. Major Major
B1. Trilogy I
B2. Trilogy II
B3. Trilogy III
Gary Peacock(b), Keith Jarrett(p), Jack DeJohnette(ds)、当時の西独盤
この2週間ばかり、大風がふいたり、大雨がふったり、急に28度まで気温が上昇したり、寒くなったり、雷が鳴ったり、大雨降ったり,なんだか大きく揺らいでいる。それでこそ金澤なんだろうけど、少々体にこたえる。そんな季節がゆらいでいるなかで、何を聴こうか、と考えながら過ごす時間が楽しい。昼間は雨だったのに、ブライドの隙間から強い光が差し込む夕刻のひととき。
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先日、友人との月例会(ジャズ会と呼んでいる)で白人のジャズピアノを取り上げた。そのなかで取り上げた一枚がゲイリー・ピーコックのTales of another。ボクが聴きはじめた頃の少し前の一枚。これを聴いた当時、この溜息が出るような美しいジャレットのピアノと、抑制を効かせつつピアノに劣らずシンバル音が美しいデジョネットのドラムが素晴らしい。そして彼らが織りなす音空間のうえで時として図太い音を畳み込むピーコックのベースが飛翔していく。適度な緊張感を孕みドライヴするインタープレイが魅惑的である。B面で所々吹き上がるピーコックのドライヴの力強さが気持ち良い。
その当時で既に数多くあったキース・ジャレットのアルバム(アトランティックやインパルス)のなかで、片鱗こそ見せはするもののシッカリとした形になっていない「聴きたい・聴きたかった音」がそこにあった。だからこそ、当時、大いに評判になっていたのだと思う。キース・ジャレットのアルバムでなかったのは,何故だろうか?
その後のスタンダード曲を題材とした3人のトリオ演奏(キース・ジャレット名義)が似て非なるモノであるように感じてならない。ボクは少なからずこの所謂スタンダーズのアルバムを持っているのだけど、Tales of anotherほど気持ちが持って行かれたことがないのは何故だろうか?あまり詰めて考える気すら起こらないので、ボクのなかで疑問のままなのだけど。
それにしても、何だか気分が落ち着かないような、季節がゆらいでいるなかで聴いていると、そのゆらぎとの不思議な調和感を与えてくれる儚い記憶の残滓のような演奏にいつまでも心惹かれているのだ。