K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Pascal Roge: Satie曲集 眼下の光景から少し離れて(イスタンブールにて)

Pascal Rogé: Satie/ 3 Gymnopedies and Other Piano Works(1990, Decca)
   1. 3 Gymnopédies - No.1
   2. 3 Gymnopédies - No.2
   3. 3 Gymnopédies - No.3
   4. Je te veux
   5. 4 Préludes flasques
   6. Prélude en tapisserie
   7. Nocturnes - 4. No.4
   8. Vieux sequins et vieilles cuirasses
   9. Embryons desséchés
 10. Gnossiennes - No. 1 - Lent
 11. Gnossiennes - No. 2 - Avec étonnement
 12. Gnossiennes - No. 3 - Lent
 13. Gnossiennes - No. 4
 14. Gnossiennes - No. 5
 15. Gnossiennes - No. 6
 16. Sonatine bureaucratique
 17. Le Piccadilly

  とても疲れているような感じがあって、イスタンブールでは部屋にいることが多い。部屋からはボスポラス海峡を見下ろすことができるから。行き交う船をみたり、アジア側の丘をぼおっと眺めたりしている。

  今は夕暮れの頃から、暮れ行く海峡を眺めながら時間を過ごしている。淡く染まる海をみて、拡声器からの祈りで日没を知り(ラマダンの最中なのだ)、暮れたあとは月を待つ。丁度今(21時)、赫い月が海峡にかかる大橋のうえに出たところ。

  そんな時間をぼんやり過ごしながら聴いているのはロジェのサティ集。サティは1980年代の真ん中頃、ちょうど働きはじめた頃に静かなブームになっていた。熱気や情感が薄い素っ気ない音の配列が、時代の空気と合ったような気がする。上の世代の熱気に対し、ボクたちの世代は明らかに熱は薄くて、白けていたから。その頃、何枚かのLPを買って聴いてみたし、その頃の個人的な記憶への標識みたいな曲なのだ。

  改めて、サティを聴いてみた。このイスタンブールに来て、海から吹き上げる風にあたりながら、持参したスピーカにiPODをつないで聴いた。なんとなく、疲れて白けたような気分になっているので、丁度良い。軽く流れるような音なのだけど、ピアノの響きが抑え気味ながら美しい。大分と古ぼけてしまった記憶の回廊に、煙突掃除のブラシを突っ込むような、痛いような痒いような感覚。曲からは余計な情感は溢れなくて、音をただ楽しめばいいのだけど。

 そんなことを書いているうちに月が随分高くなった。そろそろ寝ようか。

[追記] 

・ジャズ・ファンにも楽しめる、特にECM好きには、アルバムじゃないかなあと思います。ボクはこの頃のデッカの録音は好きです。

・ブログを通じてこのアルバムの存在を教えてくださったYさん、ありがとうございました。