K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Steve Reich: Different Trains / Electric Counterpoint(1989) こんな日曜日


大好きなライヒのアルバム。ECMのものについてはLPレコードで入手したので、後年のこのアルバムもレコードで欲しくなった1990年頃の発売なので、多分、ものが少ない。一回も流通しているのを見かけなかったし、またオークションにもかからなかった(この記事を書く前日、オークションに出た。1.5万円。手が出ない)。

そんな訳で海外サイトを探して、送料込みで随分安価に入手した。ただし、オリジナルの米盤ではなく独盤。まあいいか。

随分と待って、つい最近入着。いい。何といおうか、とても音圧が高く、迫力が違う。最近のCDは実に素晴らしい音がするのだけど、初期のCDはいま一つで、なぜか膜を通したようにきこえる。ここ数日、ライヒのこのアルバム、特にB面のパット・メセニーのほうを。彼の正確な演奏が実にライヒにミニマルにあっている、ように思える。聴く度に、うっとりしてしまう。

今日の午後はレコードを持って、門脇君のcowry coffeeへ。彼の好物だから。あの大きなタンノイで木の部屋を鳴動させる素晴らしさ、を堪能した。

そんな日曜日。

A面はクロノス・カルテット

B面はパット・メセニー


[2013-2-22記事] 繰り返す音の絶対温度

 10年ほど前だけど、知り合いのスゥエーデン人を鎌倉に連れて行ったことがある。長身で温和、無口な男。20年前の学会で同じセッションだったので、何となくの知り合い状態が続いている。スマトラ地震のときにプーケットで多くの北欧観光客が亡くなったのだけど、彼と家族も巻き込まれた。幸い無事だったのだけど、そのときのPSTDで随分長いこと苦しんだようだ。足元を遺体が流れていったことを話していたときの眼は、未だ怯えていた。

 そんな彼が静かな円覚寺の境内を歩いているときに、ボクに聞いた。ここに来る前に鞍馬寺に行ったのだけど、勤行の様子が随分と賑やかで、ここの静けさと違うのだけど、同じ仏教でしょ、何故って。そんなコトを聞かれても困ったなあ、と数分考えた。結局、意識の奥底に降りていく方法の違い、と説明した。音響や身体の動きなど外的な刺激に喚起されながら意識の階梯を下っていく方法と、意識の内面に焦点を当てながら外界を遮断し意識の階梯を探しながら下っていく方法との違い、のような曖昧な話をした。密教禅宗の違いなのだけど、正しいのかな、未だに疑問である。

 激しく移ろう窓の外の景色を見ながら聴きたくなったのはライヒ。延々と繰り返される音の差異に気持ちが持っていかれ、音の微係数に全意識が縛られる。それが、鐘や太鼓あるいはホーンのような管楽器の単調な繰り返しで次第にトランス状態に持っていくような。だけど、西蔵あるいは京都の外縁にある密教のイニシエーションのような印象は受けない。むしろ、目の前の光景に向かいながら、次第に意識の内面に下っていくような、そんな静的な心象の移ろいを活写したような音楽、のように感じる。だから、そんなことを思っていたら、ある日の鎌倉の会話を思い出した訳。

 繰り返す音の絶対温度の低さ、を楽しみながら、暗転する光景のなかに溶け込んでいくような感覚を味わう、そんな時間をいつまでも過ごしていたい。まわりが全て漆黒の闇となるまで。

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Steve Reich: Different Trains / Electric Counterpoint(1989, Nonesuch)
    1. Different Trains (America- Before the War)
    2. Different Trains (Europe- During the War)
    3. Different Trains (After the War)
    4. Electric Counterpoint (Fast)
    5. Electric Counterpoint (Slow)
    6. Electric Counterpoint (Fast)
Kronos Quartet(1-3), Pat Metheny(4-6)

表ジャケット

裏ジャケット