長い間、メルドーは苦手で聴いていなかった、トリオのアルバム。今もあまり聴かない。何故だろうか。
急激に身近に感じるようになったのは、ケヴィン・ヘイズとのmodern music。メルドーのピアニズム、というかピアノの響きの美しさに魅せられた。そのあとのピアノソロのアルバムも良くて、随分と聴いた。それでも、なんとなくボクの頭の中での位置づけ、のようなものがシックリこなくて、文章に書いてみる、ということが出来ないでいた。
このアルバムの素晴らしさ、はピアノの音、そのものにある、と思う。文章が書けない理由、を考えてみると、いろいろな旋律、音のフレーズそのものに意識が行かない、音の美しさそのものに魅了される、点にあると思う。そして、取り上げる曲の素材如何にかかわらず、好きなタイプの現代曲のように響かせる、そこに尽きている。だから、昨年（だったか）マンハッタンのブルーノートで聴いた、クリスチャン・マックブライドとのデュオにあまり印象が残っていないのは、普通のジャズであったことによる訳で、決して南米から来てはしゃいでいたオバちゃんたちと相席になったためではない。
そのようなボクの嗜好からすると、完全に中心を射貫くアルバムであり、ほんとうに素晴らしい。ピアノの響き、を延々と堪能している。キースのような憑依型の演奏ではなく、譜面があってもおかしくないほど、丁寧に作り込まれた音、だと思う。キースはシャーマンとなるべく音を紡いでいる印象、ハーシュは人肌を感じさせるような目線での美音を追いかけるような印象、メルドーは様々な曲を現代音楽的な硬質な印象に編曲しているような印象、なのだ。高い編曲能力を感じる。感情のうねり、のようなものは感じさせなく、鋭利な刃先のような音が続く。
改めて、ジャズの奏者なのだと、思わせたのはブラームスの曲を聴いたとき。これはジャズ的なゆらぎが、あまり気持ちよくなかった。クラシックの曲でそう思えるのは可笑しい、のだけど。その音の温度感が少し高め、のように感じたのは気のせい、だろうか？
このアルバム、結局３つの音源を持っている。８枚組のLPレコード、レコードについてきたMPEGのDLファイル、ONKYOの高分解能オーディオサイトから配信された44.1kHz/24bit音源(CDは16bit、CDより1000円ほど高価だけどこっちにした)。MPEGは論外（金属的な音）としても、LPと44.1kHz/24bit音源の音は僅差。どちらでも良いと思う。どちらもピアノの美しい音、響きをとらえている。LPレコードの場合、弱音でのテープ・ヒスのような雑音が気になる。ディジタル音源だから、そのようなヒスは原理的になく、レコード盤面のトラック音なのだろ。米盤固有のエネルギーに溢れる音、が弱音に向かないのだと思う。独盤だと、こんな音は出ないと思う。その代わり、強音のときの響きは素晴らしい。音を畳みかけたときに楽器とホールが共鳴しているような音が快感。44.1kHz/24bit音源もちゃんと鳴っているが、LPレコードのほうが快感指数が高いのは何故だろう。駄耳なので、ブラインドでは区別がつかないと思うのだけど。
ボクのなかでは今年一番の音、じゃないかなあ、とぼんやり考えている。
追記：
DISC4 A面 Teardrop、DISC6 A面 John Boyがいいなあ。
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Brad Mehldau: 10 Years Solo Live (2015, Nonesuch)
[DISC 1]
A1. Dark / Light: Dream Brother (Jeff Buckley)
A2. Dark / Light: Blackbird (John Lennon / Paul McCartney)
B1. Dark / Light: Jigsaw Falling into Place (Thom Yorke / Jonny Greenwood / Colin Greenwood / Phil Selway / Ed O'Brien)
B2. Dark / Light: Meditate I ? Lord Watch Over Me (Brad Mehldau)
[DISC 2]
A1. Dark / Light: And I Love Her (John Lennon / Paul McCartney)
B1. Dark / Light: My Favorite Things (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II)
B2. Dark/Light: This Here (Bobby Timmons)
[DISC 3]
A1.The Concert: Smells Like Teen Spirit (Kurt Cobain)
A2. The Concert: Waltz for J. B. (Brad Mehldau)
B1. The Concert: Get Happy (Harold Arlen / Ted Koehler)
B2. The Concert: I'm Old Fashioned (Jerome Kern / Johnny Mercer)
[DISC 4]
A1. The Concert: Teardrop (Grantley Marshall / Andrew Lee Isaac Vowles / Robert Del Naja / Elizabeth Fraser )
A2. The Concert: Meditation II ? Love Meditation (Brad Mehldau)
B1. The Concert: Holland (Brad Mehldau)
B2, The Concert: Knives Out (Thom Yorke / Jonny Greenwood / Colin Greenwood / Phil Selway / Ed O'Brien)
[DISC 5]
A1. Intermezzo / Ruckblick: Lost Chords (Brad Mehldau)
A2. Intermezzo / Ruckblick: Countdown (John Coltrane)
B1. Intermezzo / Ruckblick: On the Street Where You Live (Frederick Loewe / Alan Jay Lerner)
B2. Intermezzo / Ruckblick: Think of One (Thelonious Monk)
[DISC 6]
A1. Intermezzo / Ruckblick: Zingaro/Paris (Antonio Carlos Jobim / Brad Mehldau)
A2. Intermezzo / Ruckblick: John Boy (Brad Mehldau)
A3. Intermezzo / Ruckblick: Intermezzo in B-flat major, Op. 76: No. 4 (Johannes Brahms)
A4. Intermezzo / Ruckblick: Junk (Paul McCartney)
B1. Intermezzo / Ruckblick: Los Angeles II (Brad Mehldau)
B2. Intermezzo / Ruckblick: Monk's Mood (Thelonious Monk)
B3. Intermezzo / Ruckblick: Knives Out (Thom Yorke / Jonny Greenwood / Colin Greenwood / Phil Selway / Ed O'Brien)
[DISC 7]
A1. E Minor / E Major: La Memoire et la Mer (Leo Ferre)
A2. E Minor / E Major: Hey You (Roger Waters)
B1. E Minor / E Major: Bittersweet Symphony / Waterloo Sunset (Richard Ashcroft / Keith Richards / Mick Jagger / Ray Davies)
B2. E Minor / E Major: Intermezzo in E minor, Op. 119: No. 2 (Johannes Brahms)
[DISC 8]
A1. E Minor / E Major: Interstate Love Song (Eric Kretz / Robert DeLeo / Scott Weiland / Dean DeLeo)
B1. E Minor / E Major: God Only Knows (Brian Wilson / Tony Asher)
