K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

さようならPaul Bley

 昨日、ポール・ブレイが逝去。実は幾枚かの盤を除き、苦手感がとてもあった、のだけど、ECMの歩みをレコード盤で追いかけているうちに、ECMの原点における彼の存在の大きさ、に気がついた。ECMが「21世紀のジャズ」の原点であるならば(ボクはそう思っている)、ブレイもまた「21世紀のじゃズ」の原点なのだ。村井康司さんが著作の中で、ECMで再発されたジミー・ジェフリー・トリオについて言及されていることを思い出した。

 ポール・ブレイの音は美しい。その美しさは、内省的とも嘆美的とも云える。自らの音に酔っている、ようにすら見える。そのような自己陶酔的な音の組み立てが過剰な表現のように感じるとき、があって、それが苦手だったように思う。

 だから他者とのインタープレイが主となるデュオ、それも伝統的なジャズの奏者との対話では、自己陶酔も抑制的であり、だからこそ彼のピアノの美しさが映えるように思う。昨夜は、仕事での付き合いが終わった深夜、チェットとのレコードに針を下ろした。二人の死者が織りなす音のなかに、生前の彼らの息づかいを感じ、そして美しい音の滴りの甘さ、を楽しみ続けた。それだけで、十分彼らは生きているし、そして十分生かされているボクがいる。