K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

日野皓正、菊地雅章:HINO-KIKUCHI QUINTET (1968) 僅か数年のことだけど

 全てが若かった、と思うのだ。世界が戦後・冷戦というスキームのなかにあった時代。音楽もヒトも。

 1968年の録音。濃厚に1960年代の音であり、音よりもむしろアルバムの在り方が1960年代である、と思う。

 僅か数年のことだけど、その後の音を考えると驚くべき旋回じゃないかと思う。日野さんは日野さんの音だし、菊地さんも紛れもなくそう。だけど聴いた瞬間に1960年代半ばの4000番台のBlue Noteの複製のように感じた。ショーターのアルバム。勿論、1970年代の彼らは強いマイルスの影響下にあった、と思うのだけど、明らかに独自性の獲得への強い希求を感じる、遠心力のVectorが強いのだ。このアルバムには全く感じない、というかTactのアルバム全般にそれを感じないのだ。

 決して悪い演奏じゃないし、ソロも聴かせるのだけど。

 僅か数年のことだけど、音をつくることの意識変化の速さ、に時代の若さ、を感じてならない。多分、いやきっと、それは時代意識であって、もう毀損してしまったものだと、強く感じた。

 Tactはそんな理由であまり持っていないのだけど、それでいいなあ、と昨日届いたアルバムを聴きながら改めて思った次第。

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日野皓正、菊地雅章:HINO-KIKUCHI QUINTET (1968, Tact)
A1.Tender passion (菊地雅章)
A2.Idear portrait (菊地雅章)
B1.Long trip (菊地雅章)
B2.H.G.and pretty (菊地雅章)
日野皓正(tp), 菊地雅章(p),村岡健(ts),稲葉国光(b), 日野元彦(ds)
Recorded on Aug.30, 1968