しばらくECMのレコード聴き、はストップしていた。Gnu Highの高揚もあったし、それに、このレコードが気に入らなかった、というのも大きい。
1979年か1980年に購入して1度聴いて、それっきり。まともに対峙していない。キースの「色物」のような扱いで放置していた。当時は、ストリングスも苦手で、さらにジャズの匂いの強いものを求めていったから。最後にはキースのアルバムそのものを聴かなくなったが。
今になって聴くと、このアルバムは素晴らしい。キースの作曲能力に?を与えた記事も書いたが、これは文句なし。特に旋律がしっかりしたA面が気に入った。このアルバムで「抑制的に弾く」キースの素晴らしさ、美しさに気がついた。ストリング・オーケストラとキースは作曲ベースの演奏。そこに、ガルバレクとヘイデン(A面のみ)が淡いジャズ的な香りを漂わせた演奏を流していく。重くもなく、軽くもなく、全体のアンサンブルとよく調和している。後年であればnew seriesとして扱っていたような内容。ジャズと現代音楽が、連続的に、ごく自然に調和されたfusionになっている。そのような試みの少ない成功例の一つではなかろうか。キース、ガルバレク、ヘイデンの音色が冷たく光る、それを包み込むような薄明のストリングス、そんな光りに満ちた音楽だということを、35年後に気がつくとは、トンマだなあ、と思った。
編成は違うが、1年前に吹き込んだLuminessanceの続編的なアルバム。
参考記事:
kanazawajazzdays.hatenablog.com
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[ECM1070] Keith Jarrett: Arbour Zena (1975)
A1. Runes (Dedicated To The Unknown) 15:19
A2. Solara March (Dedicated To Pablo Casals And The Sun) 9:40
B. Mirrors (Dedicated To My Teachers) 27:49
composed by Keith Jarrett
Keith Jarrett(p), Jan Garbarek(ts, ss), Charlie Haden (b)
Mladen Gutesha (cond), Stuttgart Radio Symphony Orchestra (String orch)
Cover [Cover Graphic]: Rolf Liese
Layout: Dieter Bonhorst
Engineer: Martin Wieland
Producer: Manfred Eicher
Recorded October 1975 at Studio Bauer, Ludwigsburg