富樫雅彦に熱中した時期がある。Spiritual natureからSketchと、日本的な間、のようなものに強く惹かれた。当時はコロンビアからキングにアルバム作成の場を移していたのだが、鈴木勲との陽光やパリでのセッションに痺れ、大編成のアル・アラーフで一気に冷めた。森の中で円環のように彷徨う、ような軌跡を感じてしまったからだ。なんかSpiritual natureに戻ろう、した感じに困惑した。随分と長い間聴いていたように思ったが、1979年末から1980年末くらいの間ではないか。今と異なる、濃密な時間が流れていたのだ。
だからこのアルバムは聴かなくなった時期のもの。今頃、入手した。LPレコード時代末期の録音は素晴らしく、演奏とあわせ、それが楽しみ。コロンビア(DENON)時代はPCM録音で綺麗だけど、やや迫力に欠ける。確か(うる覚え)キングは76cm/secのアナログではなかったか。バスドラムは太く、シンバルは軽く弾ける。眼前に光景が広がる。
(当時は)若い2人の「いつものような」激しい攻めを前に、ジャズ奏者としての富樫雅彦が登場する。音の隙間という隙間にビート・パルスを叩き込む。その激しさ、が嬉しいアルバム。後年になるほど、ジャズ奏者としての顔を強く出すようになった、と思うのだけど、どうだろうか。「事故」前の宮沢昭とのアルバムで、ジャズ奏者としての力量に驚いたのだけど、もう少し彼の「ジャズ」を聴きたくなった。
原田依幸のピアノの鳴りの美しさも期待通りだし、思いもよらぬ梅津和時のフルートの美しさに驚いたり(B2)、なかなか楽しめるアルバム。
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富樫雅彦: Flame up (1981, Paddle wheel)
A1. Flame Up
B1. Spring Song
B2. Twilight
B.3 Doing The Fire
富樫雅彦(perc), 梅津和時(fl, b-cl, ss, as, perc), 原田依幸(p, perc)
1981年5月25, 27, 28日キング第2スタジオ