レコードを入手した。予想以上に楽しい。ミシャとベニンクが作る音場のなかに放りこまれる。確かに、ベニンクは床を叩いたり、鋏をシャカシャカやっている。それを楽しむ観客の吐息を感じる。
弾けるようなタイム感覚、それが彼らの魅力。音の微係数がより明瞭に伝わる、これがレコードの魅力。打音が飛び込んでくる感じ。ライヴにより近い、奏者達との時間の共有感覚を持つことができる。楽しい。
もう一回、ダウンロード音源と聴き比べてみよう。
[2017-06-25記事] 不在であるが故に際立つビート感
昨日、21世紀美術館の館長だった秋元さんの本を取り上げたのだけど、面白かったのは金沢の人を「現代アート」への入り口へ誘導する仕掛け、のような話。要は、そのようなものの有り様を空間・時間を含め、共有させる仕掛け、である。
Free musicの入り口も同じ、だと思う。大阪のインタープレーハチで山下洋輔がアップライトのピアノを叩きつける姿、飛ぶ汗、を間近に見て、近藤等則やホイジンガーが楽器を放り出す瞬間を眺め、ベニンクが植木鋏で完璧なタイムをとるのを大笑いして見た、そのような時間・空間とともに、音も官能のなかに沈み込んでいく。そんなことを愉しむ脳内回廊も、栄養補給をしないと枯れる。就職で仕事に集中して以降、数年で見事に関心も雲散霧消した。面白かったことすら忘れた。
奇しくも、秋元さんが館長だった頃、21世紀美術館の地下のギャラリーで行われたエヴァン・パーカーのソロを聴いて、不通となっていた回廊が再び開いた、そのような感覚が21世紀美術館の体験として刻まれている、それが可笑しい。
このアルバムは彼らがベルリンで行ったコンサートの記録。ドルフィーのLast Dateから10年だ。ベルリンだからブレッツマンも関与していて、ICP/FMPの共同プロデュースになっている。
creditを見てわかるように、ベニンクは多楽器。二人は遊ぶ、遊ぶ。様々な音を出すのだけど、結局のところ、彼らの魅力”溢れ出るタイム感覚”、が堪能できる。勿論、Last Dateの主役でもある(とボクは思っている)彼らのビートを正のヴェクトルで聴く、それも素晴らしい。それだけでなく、そのビートから逸脱しようとする負のヴェクトルから沸き立つ諧謔、あるいは不在であるが故に際立つビート感、そんな瞬間に感じる愉悦。それが本当に気持ちいい。
ボクはBandcampで購入したダウンロード音源を聴いているが、実に音がクリア。実は出張中なのでPCで聴いているが、音質の良さを強く感じる。帰宅が楽しみ。
このような愉しい1970年代のICPやFMPの記録が、視聴機能とともにBandcampにアップされている。素晴らしい。セシル・テイラー、ブレッツマンなんかの音源が大量にあって、目眩もの、である。
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Misha Mengelberg, Han Bennink: Einepartietischtennis (1974, FMP/ICP)
A. Eine Flasche Für Die Lola (Misha Mengelberg) 19:28
B1. Einepartietischtennis (Han Bennink) 12:08
B2. Vögeln (Han Bennink) 10:20
Coverdesign: Han Bennink
Misha Mengelberg(p, vo), Han Bennink(ds, cymbal, tp, performer, saw, wind (birds decoys) voice, vibrapan)
engineer: Jost Gebers
photograph: P Brötzmann
Recorded live by Jost Gebers on May 12th, 1974, at the Quartier Latin in Berlin.