CAFE INCUSには2回、お邪魔をした。ボクのいつもの回遊ルート(新宿・御茶ノ水間)の外縁で、とても気安く訪ねることができるからだ。
その後は表参道の月光茶房へ。随分前から行きたかったが、回遊ルート外なのでなかなか伺えなかった。渋谷方面は何十年も通過のみ。人酔いが強いからだ。チェット・ベイカーのドキュメンタリー映画がパルコで上映された1980年代末以来、じゃなかろうか?
それでも是非訪ねてみたかった。コンクリートの打ちっ放しの美しい地肌、整然とならぶ食器、そして壁面にはICPのレコードが飾られる。そんな空間に、強い音空間の主張を込めた音が、静かにさりげなく流れる。気がつかなければ、その毒に触れない程度に。
この日は思わぬ降雪。CAFE INCUSで雪をみていたら、店を閉めて月光茶房に行きたいなあ、の声を後に向かった。CAFE INCUS、月光茶房、金沢のcowry coffee、いずれも珈琲そして音、そのような全てを包摂する空間のつくり、のようなものを売る店だなあ、と思った。20世紀のジャズ喫茶とは随分と違う。バックヤードのコレクションは窺い知れぬが、表層のレコードは沢山置いていないし、基本、店主の趣味のものが中心。美味しい珈琲、選ばれた音、がつくる空間を楽しむ仕掛け。
しかし多くの20世紀形ジャズ喫茶がジャズ・バーに変貌するなかで、純然と音を味わう、という空間としての「ジャズ喫茶機能」を、これらの店がより濃く維持していることに、面白みを感じた訪問だった。
店主の原田さんには暖かく迎えて頂き、ありがたいことだった。ルイス・ステュアートのアルバムも随分と紹介頂き、嬉しかった。
それにしても同日に伺った2店ともにロルフ・キューンをかけてくれたのには驚いた。ヨヒアム・キューンとあわせ何となくマークしていなかったが、実に良かった。というわけで、帰途、早速入手した次第。それは別途。