1960年代後半のポール・ブレイを聴いていると、カーラ・ブレイやアネット・ピーコックへの関心が芽生える。カーラはジャズ圏内での活動が可視化されている感があり、非常に分かりやすい存在だし、曲も印象に残っている。アネットはジャズの重力圏から脱し、見えなくなったような感覚もあるし、またシンセサイザ・ショウのような「違った意味での」アヴァンギャルドな感覚が、むしろエキセントリックな印象を残している。
もう少しアネット・ピーコックって何なのか、を知りたいという感覚はずっとあって、少しレコードを入手してみた。何とロジャー・ターナーとのデュオ。しかし、アネットの声や演奏は多重録音されているので、デュオでは決してなくて、アネットの電子音が与える無機的な印象を和らげる背景音として使われ、面白い味を出している。そう、ディヴィッド・シルヴィアンがディレク・ベイリーの音を嵌め込んだように。
あ、それよりもミルフォード・グレイヴスが入ったサム・アミドンか?
それにしても不思議な音だ。呟くようなアネットの歌の周りに電子音や打楽器が渦巻く。そのミクロな音世界の居心地の良さ、の理由がよくわからない。結局、アネットをもう少し知りたい、という気持ちだけが満たされなかった。
追記:
最初の何回か針を落とすと実に音が悪い。仕方がないので久々に水拭きなどレコードを手入れ。驚くほど復活。やはり死んだ音を蘇らすことができる:
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Annette Peacock: I Have No Feelings (1986, Ironic Records)
A1. Nothing Ever Was, Anyway(Annette Peacock)1:53
A2. Butterflies(Annette Peacock)1:45
A3. I'm Not Perfect(Annette Peacock)2:34
A4. I Have No Feelings(Annette Peacock)3:51
A5. The Cynic(Annette Peacock)3:08
A6. The Carousel (Annette Peacock)4:45
B1. You've Left Me(Annette Peacock)2:07
B2. Sincereless(Annette Peacock)2:28
B3. Freefall(Annette Peacock)0:57
B4. This Almost Spring(Annette Peacock)2:08
B5. The Feeling's Free(Annette Peacock)3:54
B6. A Personal Revolution(Annette Peacock)2:11
B7. Not Enough(Annette Peacock)2:03
Annette Peacock(vo, instrumentals), Roger Turner(perc)