昨年、あの世へ逝ったNさんの墓参りに誘われた。驚いたのは、そこがボクの母方の祖父母と同じ墓所。僅か数ブロック先。これも縁か。
Nさんの先祖代々の墓に彼が喜びそうなウィスキーを垂らし、cowryの珈琲をポットから注ぎ皆で呑んだ。バーのカウンタを囲むような懐かしい感じであった。故人と一緒に入っている縁者には申し訳なかったが。
その後は福光屋の見学へ。杜氏の板谷さんが、Nさんのバーでの知り合いだった。これも縁。金沢で呑むときの日本酒は、基本、福光屋の黒帯。これをぬる燗。その香りは控え目であり、食事の邪魔にならない。そして、ふっと酒の力に驚く瞬間もあり愉しめる。金沢に来るまで呑んでいた大吟醸の類いは、こちらでは呑んでいない。匂いが強すぎるから。
ということで板谷杜氏の仕込んだ酒が、毎年のように国税の品評会で受賞していることは、常用酒の素晴らしさを再確認するようで悦ばしいことなのだ。
蔵での見学の前に、製造過程についてのヴィデオを見せて頂いた。古き日本を感じさせる金沢の風景のなかでの酒造が浮かび上がるような美しい映像。現実に暮らしていると、次第にそのような古の雰囲気に慣れ、もう感じなくなっている。しかし、板谷杜氏の言葉の端々、蔵人の手をかけた酒造(米質の変化に対応した日々の調整は自動化されていない)をみるにつけ、モノ造りに対する古の心のようなもの、を感じた。建物や景色に宿っているのではなく、人のなかに、である。一見近代化されているが、伝統工芸のようなモノ造り模様をみた。
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石引の福光屋に着き、倉の間にクルマを置いて見上げると秋の空。
まずはショップで集合。
その後に蔵へ向かう。これは昔の看板。電話番号を見ると自動化前。
店頭の杉玉
福光屋の酒造の水は金沢の地下水。山に降り注ぐ雨水が、百年かけて流れたもの。「大桑層」(おんまそう)と呼ばれる貝殻を多く含む地層に下、から汲み上げているそうだ。
いよいよ蔵の中へ。日本酒の薫り、が広がる。
最初に麹つくりを見学
麹
日数が経つと発酵で溶けていく感じ
このアルミ管にお湯とか氷を入れて、温度調整を人手で行う。
醪造り。糖化と発酵を同時に行うそうだ。
少し試飲
搾る
搾った後
そこはかとなく昭和が匂う蔵のなか
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