K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Lili Kraus: Bela Bartok/Piano Music

Lili Kraus: Bela Bartok/Piano Music (Vanguard)
A1. Six Romanian Folk Dances (1915)
A2. Three Rondos on Slovak Folktunes (1916-27)
A3. Three Hungarian Folksongs (1907)
A4. Sonatina (1915)
B1. Fifteen Hungarian Peasant Songs (1914-17)
B2. Evening in the Country from Ten Easy Pieces (1908)
B3. Selections from For Children vol.I (1908-9)
1980年ニューヨークで録音

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昨夜といわず、連夜の深酒で余分な自我が摩耗して、痴呆的な朝を迎えることも一つの快感のような気がする。まずは曜日や場所の確認からはじめる目覚め。そんなときに、布団から這いでて聴くLPレコードの音は、覚醒を誘うというより更なる酩酊を誘うような気持よさ。朝から漂うような心地。気持ちは自堕落に憧れるのだけど、体は律儀に仕事に向かう土曜日となった。金木犀の香が仄かに流れていた。

今朝改めて聴いて、胸を突くような音の流れに痺れたのはLili KrausのLPレコード"Bela Bartok/Piano Music "。ボクは超初心者なのでBartokをテキトーに掴んだなかの1枚。1986年に83才で亡くなったKrausが晩年(77才)に遺した作品。針を盤面に落とした瞬間から、色香纏う音に驚き、とても気持よくなった。寄り添ってくるような、女性的な優しさを音全体から伝わってくるのだから。他の演奏も聴きたくなった。Lili Krausはハンガリーのユダヤ人で、ブタペストではバルトークやコダーイに師事したとのこと。そんな後知恵を振り落とすくらい、曲と演奏者が一体化した魅力を、色艶と同時に感じる。

それにしても録音が良いLPレコードの音で、こんな艶っぽい曲を朝から聴くのはまずい。他のことをする意欲が落ちるから。まあ土曜日だからいいのだけど。

さて最近の一連のBlogのなかで、Bartokの曲はいくつか取り上げている:
Martha Argerich, Stephen Kovacevich、Schiff András
だからボクが現時点でとても気に入った作曲者の一人であることは確か。時として打楽器のような攻撃的な打鍵で迫り、時に民族音楽の力をもって包みこむような懐かしさ・優しさ。演奏者の個性とあわせ、ジャズファンを狂わせる何かをしっかりと感じた。ますます20世紀の作曲家の音を聴く意欲が昂進する土曜日となった。