自転車に満載の花
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なんとなく仕事でハノイに出かけることになった。この数年、タイを中心としたASEANの同業者との交流行事に取り組んでいる。そのなかで、タイの知人にはヴェトナムとのチャネルがないとの話を聞いて、じゃあという訳でハノイで同業者とのコンタクトを図ってやってきた。話の流れでなんとなく行く事になったので、気分はなんとなくのハノイ。タイでの交流行事の前にやって来た。何だか気合い不足も甚だしい。日本・バンコク往復にバンコク・ハノイ往復を足したチケットを準備した。そんな風に、なにも考えないで初めての国にやってきた。
夜明け前にスワンアプームに着いた。降りたときから、甘い香草の匂いに包まれる。この瞬間の脱力感がとても好きだ。気温は28度。夏のかの地は避暑感覚。ハノイへの乗り継ぎ待ちの間、夜が明けていくのをぼおっと見ていた。雲が多い。正面の大きな液晶テレビには、どこかの水族館の様子が映し出されている。夜明け前のバンコクの雲を背景に、大きな水槽のなかをサメとか亀、小さな魚達が縦横無尽に泳いでいる。鱗がきらきら光っていた。やがてバンコクの空が明るくなっていった。なんだか非日常的な光景を寝不足の頭でぼんやり見続けていた。そしてぼんやりしたまま、ハノイへ飛んだ。
何となくはじめての国はホテルの印象からはじまる。随分前に初めて行った中国は12月。北京のホテルのフロントはサンタクロース姿の女性がずらりと並んでいた。中国、特に北京は子供の頃の文化大革命時代の印象を引きずっていたので、サンタクロースには正直驚いた。街に毛沢東の気配が全くないのにも驚いた。このハノイのホテルのフロントでは、鮮やかなアオザイ姿の女性が出迎えてくれた。笑顔でとても好印象。北京のサンタクロースは笑顔でも眼が笑っていなかったのだけど、南方は眼が微笑んでいるから。
寝不足でよろよろなのだけど、現地で知人と落ち合って食事。知人はタイ・カンボジアの後にこちらに。カンボジアの現状についていろいろ話をきかせてもらった。私より丁度一回り上の方なので、まさに全共闘世代。美味しいヴェトナム料理を頂きながら、ジュノサイドの話に行き着いた。ポル・ポトの政策が毛沢東主義を純化したもの(大躍進と文化大革命を徹底したようなもの)であることは知られているが、全国民の25%が死亡、しかも自国民同士の殺し合いは類をみないのでは、という話。政治的ユートピア願望のあらわれの一つであるコミューン思想の行き着く先が、異分子の排除・殺し合いとなるのは何故だろうか、って話をぬるいハノイ・ビールを呑みながら。ポル・ポト、文化大革命、あるいは連合赤軍。ポル・ポトはカンボジアのフランス留学組なのだけど、フランス生まれのコミューン的な思潮がそんな結末に流れていくのは何故でしょうか、今度、金沢のM先生教えてください。
それはさておき、適当にはいった食堂だったけどお味はまずまず。ヴェトナム料理は口に合いました。