Peter Serkin:武満徹ピアノ作品集(BMG Victor, 1996)
1. リタニ~マイケル・ヴァイナーの追憶に
2. 遮られない休息
3. ピアノ・ディスタンス
4. フォー・アウェイ
5. 閉じた眼~瀧口修造の追憶に
6. 雨の樹 素描
7. 閉じた眼2
8. 雨の樹 素描2~オリヴィエ・メシアンの追憶に
Peter Serkin(p)
あたかも風の便りのように幾つかの訃報が届いたこの秋.ボクたちが知りえない場所からやってきて、やがてその知りえない場所に帰っていく、うたたかの時間。そんな淡い存在が、淡い存在と浅く交差していくような日常。改めてそんなヒトの実相に思い及んだりする.秋の空にたなびく一条の煙となって、拡散していくのも定めだと思えば、そんなに嫌なことではない。
そんな時に包まれるオトは適当に抽象性が高くて、光とか風とか雨との有機的反応でその姿を変えていくようなオトがいいなあと、思った。時間の概念すら定かではない場所なのだから、せめてオトの移ろいくらい楽しめなきゃね、って。
そんな気分で聴いているこのアルバムの音はとても疎。無音が音楽を組み立てている趣すらある。だから追憶せねばならないキモチがするっと入り込めるのだろう。
武満徹のオトはノヴェンバー・ステップを聴いて興味をなくしていたのだけど、最近紹介いただいたピアノ曲が案外良くかった。こんな日には、音量を落として静かに聴いていたいと思うのだ。