バンコクで涼しい夏を堪能してきた。帰国後の残暑を考えると、うんざりしていたのだけど、どうしたことか。小松に降り立ったとき、強い日差しと裏腹に、吹く風のひんやりとした感触に驚いてしまった。しっかり秋が近づいている。
秋の風に吹かれたから、という訳でもないのだけど、仕事場ではクラシックのピアノ曲を低く流している。夏の間流していたボッサよりも、何となく気分が合う。ただイケナイことは、クラシックを聴いていると、時として大きく気持を持って行かれることがあること。気がつかぬ間に、悄然としている自分に驚くことがある。不思議な磁場、があるようだ。(前の住処の近所にいたMちゃんから、クラシックは仕事中に聴くモノじゃない、と云われたのを思い出した。)
仕事場で一番流しているのはレバノン出身のAbdel Rahman El Bachaが弾くラヴェル。随分前にお茶の水のディスクユニオンで入手したのだけど(その時は知らないピアニスト)、聴いてみると存外に良い。音の透明度がとても高く、美しい音を響かせている。フランスで活躍しているようなので、アラブ的ということではないのだと思う。されど、曲によっては東洋的な旋律が入り、なにかOrientalな感じが上手くきこえてしまう。
温度はやや高め、暖かい感じ。大理石のような冷たさはなく、やや低い体温くらいの感じ。窓を開けてまま寝入ったとき、明け方に吹き込む風の冷たさに眼を覚ましたとき、手探りで探すタオルケットのような暖かさ。聴いていると、その仄かな暖かさ、に引き込まれるような感じ。今まで、凍るような冷たさに刺されるような感触を楽しむことが好きだったような気がするのだけど、これは少し違うのだけど、オイシイ。
この数ヶ月、ジャズの古いプレスのレコード盤を聴き続けていて、微かな違和感を感じはじめていたところ。バンコクから帰って、季節の屈曲点を感じたこと幸いに少し目先を変えようかな、って思っている。
CDそのもののアップはないので日本公演を。
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Abdel Rahman El Bacha: Ravel曲集(2007, Forlane)
1. Miroirs: Noctuelles
2. Miroirs: Oiseaux tristes
3. Miroirs: Une barque sur l'ocean
4. Miroirs: Alborada del gracioso
5. Miroirs: La vallee des cloches
6. Gaspard De La Nuit: Ondine
7. Gaspard De La Nuit: Le gibet
8. Gaspard De La Nuit: Scarbo
9. Le Tombeau De Couperin: Prld
10. Le Tombeau De Couperin: Fugue
11. Le Tombeau De Couperin: Forlane
12. Le Tombeau De Couperin: Rigaudon
13. Le Tombeau De Couperin: Menuet
14. Le Tombeau De Couperin: Toccata
Abdel Rahman El Bacha(p)