Cecile Ousset: Piano Works (Berlin Classics)
DISC-1: Debussy(1968)
1. Pour Le Piano
2. Poissons D'or
3. Les Collines D'anacapri
4. Feux D'artifice
5. Ce Qu'a Vu Le Vent D'ouest
6. Pour Les Degres Chromatiques
7. Pour Les Arpeges Composes
8. Jardins Sous La Pluie
9. Feuilles Mortes
10. L'isle Joyeuse
DISC-2:Ravel (1971)
1. Jeux D'eau
2. Gaspard De La Nuit
3. Noctuelles
4. Oiseaux Tristes
5. Une Barque Sur L'ocean
6. Alborada Del Gracioso
7. La Vallee Des Cloches
いよいよ昨日あたりから寒暖計の水銀が膨らんでいって、外套がなくても夜歩きできるようなぬるい大気がやってきた。歩いていて、辻から辻を歩いていると、花の匂いが移ろい続けて飽きない。雪のある地方は、こんなに春への移ろいが忙しいものだとは知らなかった。クラシックでもジャズでも。四季折々の心象風景があって、そして季節から季節への遷移の様子にあわせて、気持ちの奥底で求めている音が変わっていくことが無意識の意識のような感じ方をしている。だから、このあいだまでの、冬の間はヴェデルニコフのようなロシアの弾き手、プロコフィエフのようなロシアのつくり手による音が気持ちを動かしていた。ここ3週間ばかりは、ゆっくりとフランスの弾き手、フランスの曲に気持ちが移っていって面白い。なんとなく春だしねえ。
そんな温かい昼間の外歩きのとき、先日入手したセシル・ウーセのドビュッシー・ラヴェル曲集を聴いている。とても明晰な音で適度に粒度があって、また過度の感情移入や走りがなくて、この季節のなかで聴くには調度良い感じ。EMIとかのクラシックお徳用盤でときどき出くわすウーセなのだけど、気になって少し古い演奏を入手してみた。ピアノの響きがとても綺麗で気持ちが良い。ミケランジェリやアルゲリッチのような心理の奥底まで引きずり込むような凄みはない。その代わりに、春の川面できらめく散乱光のような掌中に閉じ込めることができるような音の弾け方が丁度いいのだ。だから夜のガスパールも水の魔物の話ではなくて、淡い水の精が水面から浮かび上がるような清潔な感じ。あまり暗い影は感じない。ただただ、水や光が散る様を眺めることが楽しいのだ。
[追記] これで気をよくして,同じくウーセのラヴェル集(EMI,1988)を手に入れたのだけど,こっちのほうが随分と弾けた感じで面白い。つい2匹目の泥鰌を探しに出かけるのだけど、出費ばかりかさむような気がしてきた。