K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

高橋アキ: Piano Space (1972-73) 曖昧な媒体だから

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高橋アキ: Piano Space (1972-73, CP² Recordings )
(Disc 1)
A1. 武満徹/Uninterrupted Rests 8:45
A2. 武満徹/Piano Distance 5:38
A3. 湯浅譲二/Cosmos Haptic 7:38
A4. 湯浅譲二/On The Keyboard 7:39
B1. 佐藤慶次郎/Calligraphy For Piano 5:53
B2. 松平頼暁/Allotropy For Pianist 8:24
B3. 水野修孝/Tone For Piano 13:20
(Disc 2)
C1. 一柳 慧/Piano Media 6:13
C2. 石井眞木/Aphorismen II Für Einen Pianisten 8:35
C3. 三枝成章/(Baire's Theorem) 18:57
D1. 近藤譲/Air I For Amplified Piano With Trumpet 5:14
Hosei Soken(tp)
D2. 高橋悠治/Maeander 22:58
(Disc 3)
E1. Anton Webern Variationen Für Klavier 7:08
E2. Pierre Boulez Première Sonate Pour Piano 9:55
E3. Luciano Berio Sequenza IV For Piano 10:48
E4. Iannis Xenakis Herma 6:42
F1. Olivier Messiaen Mode De Valeurs Et D'Intensités Pour Piano 3:26
F2. Karlheinz Stockhausen Klavierstück XI 7:05
F3. Sylvano Bussotti Piano Pieces For David Tudor #3 7:35
F4. John Cage Winter Music 9:20
高橋アキ(p)
A1 & A2 recorded at the Setagaya Community Hall, August 10, 1972. 
A3 recorded at the Setagaya Community Hall, April 9, 1973. 
A4 recorded at the Setagaya Community Hall, September 19, 1972. 
B1 recorded at the Setagaya Community Hall, August 9, 1972. 
B2 recorded at the Setagaya Community Hall, August 9, 1972. 
B3 recorded at the Setagaya Community Hall, April 10, 1973. 
C1 recorded at the Setagaya Community Hall, August 10, 1972. 
C2 recorded at Toshiba Studio #1, January 13, 1973. 
C3 recorded at Toshiba Studio #1, July 15, 17, 19, 1973. 
D1 recorded at Mori Studio, May 17, 1973. 
D2 recorded at Toshiba Studio #1, July 9, 1973. 
E1 recorded at the Setagaya Community Hall, March 5, 1973. 
E2 recorded at Toshiba Studio #1, July 30, 1973. 
E3 recorded at the Setagaya Community Hall, March 6, 1973. 
E4 recorded at the Kawaguchi Community Hall, September 20, 1973. 
F1 recorded at the Omiya Community Hall, June 18, 1973. 
F2 recorded at the Setagaya Community Hall, September 18, 1972. 
F3 recorded at the Kawaguchi Community Hall, September 19, 1973. 
F4 recorded at the Setagaya Community Hall, December 19, 1973.

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最近のtoshiya氏のブログを読んで、再び、このレコードの存在を思い出した:

これはもの凄い!「高橋アキの世界」。: 中年音楽狂日記:Toshiya's Music Bar

哀しいことに、数に快楽を頼ると、個が疎かになるものだ。新しいフォノ・イコライザで聴いていない、ので聴くことにした。

勿論、素晴らしい音響で再びボクの前に現れた。それは装置のアップ・グレイドによる効果だけではない。何回かトレースする度に音が蘇っていく感覚、古レコードが蘇るのだ。こんな曖昧な媒体だからレコードは楽しい。

クラシック奏者の演奏を聴いていると、ジャズ奏者の現代音楽「風」インプロでのタッチの不確かさ、が気になってしまう、という弊がある。だから対極にあるモンクの音楽、意図せざるアンチ・テーゼのようなピアノにも惹かれるのだろうな(ただの呟き)。勿論、日本の奏者で高瀬アキや佐藤允彦のピアノには、現代音楽的であっても、そんなストレスは全く感じないのだけど。

さて手持ちのレコードは米盤。toshiya氏の東芝EMI盤とどっちがオリジナルか気になった。

東芝EMI盤は1973年、本盤は1976年。さて、どっちの音が好みなんだろう。そんな嫌なことが頭を掠めた。好みは独盤、米盤も嫌いじゃない。でも日本盤の「柔らかさ」も気になるな。硬質な音のアルバムだから。

追記:

このアルバムはDUで購入。なんとジャズピアノコーナーにあって小躍りした記憶がある。高瀬アキと間違ったんだろうな担当者は。

[2019-05-01]

 1972-73年の演奏。内外の現代曲がLP3枚分に集められている。2枚分は日本の作曲家によるもので、高橋アキのために作曲されたものが多い。また曲によっては電子音(同時期のマイルスバンドに通底する響きに痺れた)や打楽器、トランペットも入る。

ここまで書くと、オムニバス的な収拾がつかないオムニバスのようにも見えるが、全体が統一的な音響になっていて、まさに邦題「高橋アキの世界」に。ECMのような残響による空間造成のようなことはやってなくて、むしろ、ややデッドな録音空間のなかでピアノの鋭さのような、微係数を強化したような響きが冷たく光る。

やっと3枚組みを聴き通したが、飽きはない。ただ始まりも終わりもない円環のような時間軸のなかで、射すようなピアノの音に浸っていただけ、である。

高橋アキの世界

高橋アキの世界

  • アーティスト: 高橋アキ,武満徹,湯浅譲二,佐藤慶次郎,松平頼暁,水野修孝,一柳慧,石井眞木,三枝成章,近藤譲,高橋悠治
  • 出版社/メーカー: TOWER RECORDS EMI CLASSIC
  • 発売日: 2009/03/04
  • メディア: CD
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