K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

(ECM2381) Jakob Bro: Gefion (2013) 浮遊というジャンル・不安への強いノスタルジイ

 最近はとても仕事での出張が多く、金沢に居る時間は友人と逢ったり、外に飛び出したりで、ゆっくりと音楽を聴いていない。その代わりに、移動時間を使って、本は読んでいるのだけど。そうであっても、古いレコードや最近のCDも結構マメに買っているのだけど、その印象をブログに書き込むほどの気持ちの余裕がない。

 それはそれで精神的な苦痛、とも云えなくもない日々で酒を呑んだときの気持ちの荒れ方(外からは分からないと思う)も、なんとなく強いように思える。そんなとき、なにかの弾みでCDをインターネットで注文してしまうことがある、ようだ。このアルバムがそうなのだけど、なぜ注文したのか思い出せないアルバム。イヤになってしまう。

 届いて封をを開けたとき、注文の記憶がないアルバムが出てくるのも奇妙な感じなのだけど、仕方がない。聴いてみた。

 面白いことに、実にいい加減な購入なのだけど、大当たり。好みにピッタリ入った。確かに、ビル・フリーゼル的な浮遊系の音。Nik Bärtschの Roninの電子的ミニマルとか、フリーゼル(特に1990年代)は好みなので、そのあたりの浮遊というジャンル、の1枚として好感を持った。

 実は、いいなあと思ったのは、その浮遊系の音ということよりも、ベースのトーマス・モーガンの存在感。淡い電子音を奏でるギターの上に広がるベースの図太いアコウスティックな音(ECMの音処理後、って十分分かっているけど)が打ち込まれる瞬間瞬間がとても快感なのだ。クリステンセン(この人も現役なんだなあ)の打楽器としてのドラムも無駄がなく、気持ちよい。

 このアルバムは40分代で短いのもよい。意識が集中できているうちに、急に幕が落ちるような、突き放されたような感じで無音に至る。そんな瞬間まで引っ張っていかれる快感って、いいもんだ。一昨日の記事に書いたように、友人達がきたときに一番にかけたのだけど、Yが苦手って云った理由が面白かった。何処に連れて行かれるか分からないから不安、と。ボクが聴く理由は、何処に連れて行かれるか分からない不安への強いノスタルジイ。そう、夕暮れの路地を歩いていると、知らない誰かに連れ去られる自分が影のように付きまとう不安感。家の玄関に入って、扉を閉じたときに切れてしまう異界への尻尾のようなもの。そんな所在のない淡い記憶とともに、聴く音楽じゃないかと思うのだ。絶対安全圏のなかでの遊び、なのだから。

youtu.be

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[ECM2381] Jakob Bro: Gefion (2013) 
1. Gefion(Jakob Bro) 10:33
2. Copenhagen(Jakob Bro) 4:24
3. And They All Came Marching Out Of The Woods(Jakob Bro) 4:30
4. White(Jakob Bro) 5:09
5. Lyskaster(Jakob Bro) 4:14
6. Airport Poem(Jakob Bro) 3:28
7. Oktober(Jakob Bro) 4:17
8. Ending(Jakob Bro) 2:48
Jakob Bro(g), Thomas Morgan(b), Jon Christensen(ds)
Design: Sascha Kleis
Photograph [Cover Photo] : Morten Delbæk
Photograph [Liner Photos] :Ryo Mitamura
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Producer: Manfred Eicher
Recorded November 2013
Rainbow Studio, Oslo