帰国して、早速聴いた。やはり、空間的な音の造作が素晴らしくて、聴き惚れてしまった。
人の意識の分解能に近い、速度でのベイリーの音の変化、そして楽器のボディを含めた共鳴音のようなものが空間を広げる。
実はこのセッションはCDでも出ていて、収録セッション数は倍近く多い。聴いてみたが、音圧がやや弱い点が気になったが、決して録音を損なうレベルではないと思う。
実は帰国して、高柳昌行のCDが幾つか届いていたが、まず、音的にしんどい感じ。CDの音なのか、高柳の音なのか、何にしんどさを感じているのか、はっきりしないが。要は輪郭が不明瞭なエレクトリックの音に、イラっきた、ということ。レコードでNew directionsの音源(オムニバスだけど)があるので、もう少し聴いてみようと思う、
[2016-6-8記事 Derek Bailey: Duo & Trio Improvisation (1978) あの瞬間に隣り合わせに]
ジャズを聴き始めた頃、の少し前の録音。ざらつくように記憶の底に干からびている10代最後の頃、あの瞬間に隣り合わせに、このような音が存在していた、ということだ。
昨日、届いたレコード。針を下ろした瞬間から、鋭い刃先を振り回すような音が続く。当時の先鋭的な奏者達、英と日の、が対峙する。
デレク・ベイリー、土取利行、吉澤元治、阿部薫、近藤等則、高木元輝
幾つかの組み合わせのセッションが収録されているが、デレク・ベイリー、土取利行、吉澤元治のトリオが特に素晴らしい。ベイリーの微分的な音の断片が造り出す速度のようなものを、さらに加速するような、すくい上げるような打楽器。ほとんど、その速度感で目眩がしそうになる。その音へコラージュするようなベース。空間が何重にも捻れるような感覚があって、ひりひりするような感覚。
レコードから流れる音は、奏者への距離感が近く、また楽器の響きを蠱惑的に伝えること、がママある。このアルバムの最大の魅力はそこで、ベイリーと土取がつくる速さ、が血が滲むような生々しさで眼前に広がる。それだけで目眩がしそうだ。
楽器が作る音の美しさを愉しむ快楽を追求しているような遊び、のなかにいるのだけど、まさか、improvised musicをレコードで聴く快楽、が存在するとは思いもよらなかった。道理で、どのレコードも高い訳だ。これは、ライナーノート欠品で格安。間章の文章は「とても」苦手なので、全く問題ないのである。
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Derek Bailey: Duo & Trio Improvisation (1978, Kitty)
A1. Improvisation 21 9:28
Derek Bailey(g), Motoharu Yoshizawa(b), Toshi Tsuchitor (ds)
A2. Improvisation 22 2:36
Derek Bailey(g), Toshinori Kondo (tp, Horn)
A3. Improvisation 23 12:13
Derek Bailey(g), Kaoru Abe(as), Mototeru Takagi(as,ts)
B1. Improvisation 24 8:03
Derek Bailey(g), Toshi Tsuchitori (ds,perc)
B2. Improvisation 25 2:02
Mototeru Takagi(ss,ts), Toshinori Kondo (tp, Horn)
B3. Improvisation 26 5:47
Mototeru Takagi(ss,ts), Toshinori Kondo (tp, Horn)
B4. Improvisation 27 6:27
Derek Bailey(g), Motoharu Yoshizawa(b), Toshi Tsuchitor (ds)
Design [Sleeve]: Takeshi Shino
Engineer [Recording, Remix] : Akio Itoh
Photograp[Cover, Inner]: Yuhji Itsumi
Photograph [Inner]: Toshio Kuwahara
Supervised By, Coordinator [Artist Coordinate], Liner Notes: Aquirax Aida
Producer :Hideto Isoda
Recorded at Polydor 1st Studio, Tokyo, 19th April, '78.
Remixed at Polydor 2nd Studio, Tokyo, 3rd May '78