K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

近藤等則: What Are You Talking About? (1983)やっぱり「変な人」だったな、さようなら

近藤等則: What Are You Talking About? (1983, DIW)
DIW – DIW-1119, IMA – IMA-003
A1. From Time To Time (Tristan Honsinger) 2:59
A2. Waking (Tristan Honsinger) 3:00
A3. Out The Back Door (Tristan Honsinger) 3:36
A4. What Are You Talking About? (Tristan Honsinger) 3:59
A5. Fried Rice Field In The Summer Night (Toshinori Kondo) 6:05
B1. When Steve Comes To Tokyo (Toshinori Kondo) 3:08
B2. Sasafrakiboo (Tristan Honsinger) 3:49
B3. Can Can Street (Toshinori Kondo) 3:26
B4. Bitter Sweet (Tristan Honsinger) 7:14
B5. Fish Song (Tristan Honsinger) 2:27
近藤等則(tp, vo, Chinese oboe), Tristan Honsinger(cello,vo), Peter Kowald(b, vo), 豊住芳三郎(ds, vo)
Producer : Toshinori Kondo
Recorded by Kazuhiro Kasuya
Technician [Recording Asist By] :Yuhiko Tashiro
Recorded at Chestnut Studio in Suzuka Mountain, Japan, on 24 & 25 May 1983.
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ボクが最初に近藤等則を聴いたのは、レコードではなく生。ホイジンガーとのデュオ。同志社大学の学友会館だった。そのときのレコードの物販、を1枚も買わなかったのは長年の痛恨事であったが、最近になってBellowsなどの初期アルバムを何枚か入手し、気持ちが晴れた。どうも近藤家の物品整理だったような気がするが、どうだったのだろうか。

当時の近藤は青年将校よろしく、異様な気が漲っていて、体を使った演劇的な演奏で、音だけでは何とも、だったような気がする。それはBellowsの初リーダ作を聴くと、ジャケットを眺めて、なんとか彼の身体を想起しないと、何が何だか、とも思う。ICPオーケストラで聴いた時、その近藤の諧謔的な面は、ICP一派としての側面なんだなあ、と理解したが、音そのものは、ベイリーやパーカーのIncus一派のような無機的なものであるが、奥行きとか深みが乏しい音なので、どうも彼らのように楽しめない部分がある。だからこその諧謔的な身体の動きであり、後年の電気トランペットではないか、とも思う。(当時の身体の動き、は浅川マキのDVD、1984年の京大西部講堂、で片鱗を垣間見ることができる。IMAのLDでは分からないな。)

彼の死を知って、スピーカの前で相対する盤として、これと「記憶」を選んだ。単に気分ではあるが、これに何か引っ掛かるものがあったからだ。以前、以降の近藤等則のHubのようなアルバムである。以前、即ち欧米のImproviserと斬り合った近藤、以降、即ちIMAから電気ラッパ吹きとしての近藤。電気は使ってないが、以前、以降の音が混在し、それらがフォームとしてのジャズの上に80%は諧謔的に、20%は真剣に組み上げられている。20%で見せる変態的なジャズ愛が麗しい。

このアルバムのなかで以降の姿は「変な旋律への偏愛」じゃないかな、と思う。それがI1〜2年でIMAというパッケージに進化させている。ここでは4ビートではあるが、急速にIMAまで変態した訳だ。

ボクには良く分からないのは、このアルバムの「奇妙な味」が近藤から来ているのか、あるいはホイジンガーから来ているのか、2人から来ているのか。ホイジンガーも近藤も後年の浅川マキ・プロデュースのCDで演奏しているが、相似形の2人なのかもしれない。

何よりもこのアルバムの音響が素晴らしい。新しいイコライザ・アンプ(近藤のアルバムでその話か?)で聴くと、実に良く鳴って、印象を一新した。コヴァルトのベースや豊住のドラムが素晴らしく収録されていて、弦や太鼓の打音にすっかり持っていかれる。2人の演奏は求心的で、遠心的な近藤とホイジンガーをジャズ、フリー・ジャズのフレーム、それも沸騰したフレームに繋ぎ止める。

このアルバムの収録光景はヴィデオ化されているようなのだけど、誰か公開しないのかな。

つい語ってしまった。やっぱり「変な人」だったな、さようなら。

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