少し古い言葉だけど、日本の軽音楽そのもので、洗練された到達点なんだろうな、と思う。橋本一子さんのピアノ、ヴォイスともに魅惑的であることは30年昔と何ら変わらず、いや、ますますsmoothになっていくことに驚きを隠せない。それにしても、共演の中村善郎さんともども還暦を大分前に過ぎているとは思えない。恐るべし、団塊末期世代の生命力。(ボクの職場の近所の餃子屋さんも、彼らと同じ世代だけど、本日結婚式をあげたみたい。おめでとうございます。その彼も全く元気で驚いてしまう。)
それはさておき、このアルバムがapple musicで聴けることがわかって、今日前半の仕事場のBGM。ピアノのタッチも抑制的で、響きはゲッツ・ジルベルトのジョビンを思い出させる。が、要所要所でほとばしるような音は気持ち良い。CDを注文しようか、とても動揺している。
このアルバムが企画されていることは随分前に知ったので、予習代わりに中村善郎さんのアルバムを2枚入手したのだけど、どうもピンとこない。youtubeでみるライヴはそうでもないのだけど、何か引っかかる。ジルベルトも引っかかるように、呟くように唄うのだけど、それが(多分)言語特性とうまく合って、独特の抑揚、旨味のようなものが出ている。中村善郎さんのアルバムでは、そこがなんかsmoothではないように感じてしまう。
橋本一子さんの場合、大昔(30年も前)のVivantでの英語歌詞はそんな感じで、ちょっとアカンのだけど、今では言語を無力化するようなヴォイスに進化(深化?)している。そのあたりの滋味はジルベルトに近いものを感じたりする。
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というわけで、微妙な部分もあるが、全体的にはとても良いアルバムで、聴かせるもの。是非、まずはapple musicで試して欲しい。ジャズ・ファンもボッサ・ノヴァ・ファンも。スティーヴィー・ワンダーのmy cherie amourが良かったなあ。唄もアレンジも。
あまり中村善郎さんのことを良く書いていないが、あくまでボクの嗜好と微妙にずれている、だけのこと。少しプロフィールを調べると、高校から大学まで(大学は学部まで、工学部!)、ボクの先輩。石油ショックの後の時代に就職しないで、こっちに来たのかな。自営業者の子弟が多い高校だったので、何となくそんな先輩が居てもおかしくない。反権威でなく、自営業者特有の脱権威的な面白い奴が多い学校だったから。ボクは、まあそんななかで勤め人の息子らしく、大人しく過ごし、勤め人になった訳だけど。
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橋本一子, 中村善郎: duo (2016, SPACE SHOWER)
1. Ela e Carioca
2. Inutil Paisagem
3. Eu Quero Um Samba
4. Fotografia
5. My Cherie Amour
6. Luiza
7. Voce e Eu
8. So Many Stars
9. Horizonte~地平線
10. So Nice-Samba de Verao
11. Sonho de Vento~風の夢
橋本一子(p,vo), 中村善郎(g,vo)