チック・コリアを数日にわたり聴く、なんて30年ぶり、じゃなかろうか?自分のなかで、急速に光彩を失った奏者だけに、聴き直すのは30年前(いや40年近く前だ)の自分への旅、のようなものだ。
しかし当時はサークルは苦手で、そんなに聴いていなかった。というわけで、フリーに最接近したチック・コリアを新鮮に聴いている。1970年から1971年はじめまでのサークルのライヴを聴くと、コリアの案外伝統的なジャズのビートの上で観念的なブラックストンが乗っていく対比、が面白かった。聴ける。
このアルバムは最後の録音で、スタジオ。全編コリアの作曲。「最後の」フリー・ジャズの作品で、improvised musicへの接近、のような内容。印象はベイリーらのKaryobinに近い。しかし、Karyobinが「音と音の間隔や時間差」のようなものに強い緊張感と奏者の強い磁場のようなものを聴き手に伝えるもので、そこに即興音楽の強度、のようなものを感じる。しかし、このアルバムはむしろ「意図された」「作曲された」ものであることが強く感じられる。ライヴであれだけ存在感のあったブラックストンも影が薄い。音を出すと、ブラックストンの存在感は強いのだけど、場面が少ない。面白くなくもないが、何とも感もある。解散前、というのが納得できる一枚。先が見えない。
という訳で、中山某ではないが「サークルはライヴを聴け」のようだ。
この翌年、コリア抜きでのトリオの演奏の強度、を聴くと、確かにこれは隘路であったことが分かる。それに「観念的なブラックストン」的な話はそうでなくて、コリア自身であった、ように思える、のがこのアルバムでの発見だった。
あとLP1枚半が残っているので、もう少し聴かなきゃ。
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Circle: Circle-2 Gathering (1971, CBS Sony)
A. Gathering - Part I (C. Corea)
B. Gathering - Part II (C. Corea)
Anthony Braxton(reeds, perc), Chick Corea(p, bamboo fl, perc), Dave Holland(b, cello, guiter, perc), Barry Altschul(ds, finger piano, perc)
Album Design: Eiko Ishioka, Seiya Sawayama, Yoshio Nakanishi
Producer: Kiyoshi Itoh
Recorded May 17, 1971 at Upsurge Studio, NYC.