K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Tyshawn Sorey: The Adornment of Time

Tyshawn Sorey: The Adornment of Time (2019, pi recordings)
1. The Adornment of Time 01:04:57
Tyshawn Sorey(ds, perc), Marilyn Crispell(p)

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タイショーン・ソリーの新作。マリリン・クリスペルとのデュオ、と見ると、発売までが待ち遠しかった。

ソリーの近作は、長時間の大作かつ現代音楽的な作り込みが勝っていて、少し遠のいていた。クリスペルとのデュオは、もう少しジャズ的な匂いが強いのでは、という期待。それに楽器の音色が美しい二人なので、その音色に聴く前から惹かれた、という期待。

そんな期待に添う部分あり、外している部分ありなのだけど、ここ数年のなかでは一番面白い。

とにかく音色が美しく、様々な流れの中で、音が美しい。その点については大満足で、残響イコライザに汚染されない、自然な残響の中でのピアノと打楽器がひたすら美しい。

作曲で詰められた現代音楽風ではない、という部分は、もう少し面白い構造になっている。1時間4分57秒の流れは「多分」曲が構成されているような、ある意味で流れが作り込まれている印象がある。だからダレるような部分はなく、場面が連続的に変わっていくような舞台をみるような面白みがある。そして場面の一つ一つでは、ジャズ的な応酬や盛り上がりがあったり、室内楽的な静謐な場面があったり、ミニマル的な曲が流れたり、彩りが豊かな場面を見ているような感じ。

全体として、いやソリーやクリスペルの音楽全般がそうなのだけど、温度の低い、透明感がある音が魅力なのだけど、このアルバムは彼らの音色だけでなく、作曲された曲そのものの流れや構造そのものが、音への熱狂へ距離をとる感じが、そのような印象を作っている。素晴らしい。しっかりした曲を聴いた、そのような心地良い疲労感が残る1時間を越える体験だった。

 

 bandcampで試聴可能:

The Adornment Of Time

The Adornment Of Time