K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Tommy Flanagan: Overseas (1957) Rudy Van Gelderがマスタリングした音を疑似ステレオの再発盤で聴く

エルヴィン・ジョーンズのブラシの妙とフラナガンの手堅いバップ・ピアノで聴かせる盤。ご多分に漏れず、愛聴盤。かつて「C」が沢山書いてある「OverCs」ジャケットのテイチク盤を持っていたが、友人に貸したっきり。再び、DIW盤を入手して聴いている:

このOverseasの発売元の関係を整理する。

元来はストックホルムのMetronomeのスタジオで録音され、7インチシングル3枚が発売されている。

この音源を米国ではPrestigeがLPで発売。例の「OverCs」ジャケット。マスタリングとラッカー盤作成はヴァン・ゲルダー(RVG)。

日本ではメトロノーム社の音源を使って、テイチクが販売。1968年から中平穂積の写真を使った独自ジャケット。音源もMetronome直送?で、RVGは関与していないと思われる。(Prestigeの国内販売元と異なる)

1970年代後半、「幻の名盤」ブームのなかで、テイチク盤は「OverCs」ジャケットに換装。これは笑える。

1980年代後半になって、国内販売元がDIWに。ジャケットはDIWらしいこだわりで、Metronome盤シングルの拡大。これは、もとの音源がスウェーデンDragonレーベルの権利になった?からのようだ(推測)。当時、Dragonレーベルのマイルス発掘盤の国内盤はDIWが出していたから。従い、この音源の由来もMetronome直送?と思われる。

長くなったが、要は2つの音源がある。Metronome直送?とRVGのマスタリング盤である。長くRVGマスタリング盤が気になっていたが、原盤は高価。1969年の再発盤は疑似ステレオのようなので忌避していた。最近になって、安価だったのでこれを入手。RVG刻印である。疑似ステレオであるが、コロンビアの疑似ステレオのような音域での左右分離は行われておらず、殆どステレオ感はなかった。しかし、モノラル針で聴くと音質が落ちたので、カッティグのみステレオ、ということではなかろうか。

さて音質であるが、以下の4音源を聴き比べてみた:

DIW盤(1986年)、テイチク盤(19790年代はじめ?)、DIWのCD盤(2007年)、そしてPrestige盤再発(1968年)。

これらのなかで、ブラシの細部まで良く聴き取れたのはPrestige盤再発。音圧高めのお馴染みRVG的録音であるが、Prestigeなのでピアノの音も綺麗に響いている。一番バランスが良い印象だった。テイチク盤は大人しい音でブラシの音はやや引っ込んでいる。DIW盤は音圧は高め。CD盤ではギリギリまで高めている、詰め込んだ印象。その意味で、ジャズ的な音の圧迫感はなかなかのもので聴かせる。しかし、ブラシの音の解像度はレコードには届かない。全般的に古いレコードの音の鮮度の良さ、を聴くような感じだった。