K’s Jazz Days

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ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

Bill Evans: Consecration The Last Complete Collection: 確かにレコード最末期の良さ

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Bill Evans: Consecration The Last Complete Collection (1980, Alfa Jazz)
(Aug. 31, 1980)
A1. Re: Person I Knew
A2. Tiffany
A3. My Foolish Heart
A4. Song From Mash (Suicide Is Painless)
B1. Knit For Mary F.
B2. Days Of Wine And Roses
(Sept. 1, 1980)
B3. Your Story
C1. The Two Lonely People
C2. My Romance
C3. Tiffany
D1. Polka Dots And Moonbeams
D2. Like Someone In Love
D3. Letter To Evan
E1. Gary's Theme
E2. Days Of Wine And Roses
E3. I Do It For Your Love
F1. My Romance
(Sept. 2, 1980)
F2. Re: Person I Knew
F3. Tiffany
G1. Knit For Mary F.
G2. Like Someone In Love
G3. Your Story
H1. Someday My Prince Will Come
H2. I Do It For Your Love
H3. My Romance
(Sept. 3, 1980)
I1. Re: Person I Knew
I2. Tiffany
I3. Polka Dots And Moonbeams
I4. Song From Mash (Suicide Is Painless)
J1. Your Story
J2. Like Someone In Love
J3. Knit For Mary F.
J4. The Two Lonely People
K1. My Romance
(Sept. 4, 1980)
K2. Up With The Lark
K3. Mornin' Glory
L1. Polka Dots And Moonbeams
L2. Like Someone In Love
L3. Turn Out The Stars
M1. Your Story
M2. Emily
M3. I Do It For Your Love
M4. My Romance
(Sept. 5, 1980)
N1. Re: Person I Knew
N2. Tiffany
N3. Knit For Mary F.
N4. My Foolish Heart
O1. Who Can I Turn To
O2. Emily
O3. Laurie
P1. You And The Night And The Music
(Sept. 6, 1980)
P2. Re: Person I Knew
P3. Laurie
Q1. Bill's Hit Tune
Q2. The Two Lonely People
Q3. Song From Mash (Suicide Is Painless)
Q4. My Foolish Heart
R1. Days Of Wine And Roses
R2. But Beautiful
(Sept. 7, 1980)
R3. Emily
R4. Polka Dots And Moonbeams
S1. Like Someone In Love
S2. Your Story
S3. Days Of Wine And Roses
S4. Knit For Mary F.
T1. Who Can I Turn To
T2. I Do It For Your Love
T3. My Romance
Bill Evans(p), Marc Johnson (b), Joe LaBarbera(ds)
The Final Recordings, Live at Keystone Korner, Aug. 31 - Sep. 7, 1980

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[2019-05-25] 

一年ぶりに聴き進める。5枚目から聴き直し、6枚目まで。9/4のセット。

素晴らしい。エヴァンスから怒濤のように音が流れ出る、そのドキュメンタリーだ。

そして何よりも凄いな、と思うのはキーストンコーナーの空気感が、誇張や潤色なく伝わること。全くの透明なのだ。そして楽器の定位が滲まず、しっかりと伝わる。確かにレコード最末期の良さが伝わるアルバム。

少し音量を上げると、このライヴの末席に座する感覚。

弱音は弱音で収められ、次第にヴォリュームを増していく様子なども素晴らしい。熱気を帯びた冷たい音が美しい。

嶋護「ジャズの秘境」で再び聴きはじめた。著者のエヴァンス愛が伝染したようだ。このアルバムや菅野録音、古いコロンビア盤を聴くと、著者の好みが良く伝わる。

[2019-05-24]
レコードは5枚目に入った。9/3のセットだ。演奏は4日目に入った。8日間のライヴなので真ん中まで来ている。折返し目前だ。

エヴァンスの美しいソロではじまり、マーク・ジョンソンがそっと合わせる。そこには激情はなく覚醒した耽美の世界。美しい。この時期のエヴァンスには、聴き手の速度感を遙かに超えた、疾走感がある。しかし、この日の演奏は過剰な疾走感は収まり、アフィニティで聴くことができるエヴァンスの姿をみることができる。

最初の4曲はMCなく一気に演奏。安定したなかにも煌めく高音の美しさを愉しむことができる。4曲めのMASHは弾けるような勢いであるが、激情のようなものは感じない。キーストンコーナーの聴き手(とスピーカーの前の私)との交感のなかでの熱気、が伝わる演奏。終わった後のエヴァンスの声には満足感が浮かぶ。聴衆も熱狂している(ここで5枚目A面は終わる)。その後の演奏はやや平板であるが、安定して美音を聴かせる。最後のMCの力強いこと。満面の笑み、が見える。

キーストン・コーナーという場に馴染み、ゆったりとした気分でピアノに対峙するエヴァンスの姿が浮かぶ。そこには、日一日と迫る最期の日を思い浮かべさせる影はない。過剰なコンテクストを退けるピアニストの姿しか想起させない。

前半の演奏の中では、一番良い。

 

[2019-05-23] 

9/2の演奏まで進んだ。レコードで4枚目のお仕舞いまで。

そこには激情も疲労も無く、あたりきに弾いているエヴァンスがいる。弛緩した空気の中で、マーク・ジョンソンやジョー・エアバーバラへソロを託す場面が後半になって増えている。そのようななかで垣間見えるピアノの美音が気分を森閑へ誘うような感じである。

最終曲で一気に弾みをつけた様子が楽しい。破綻前の寸止め演奏だけど、内的な緊迫感、緊張感は感じさせない。ライヴを仕舞うにあたっての昂揚感、といった体である。楽しいセットだった。

 

[2019-05-22] 

正確には、昨日は9/1の前半のセットまで(2枚目)。後半のセットを今日聴いている。Days Of Wine And Roses (E2)で更に空気が和らいだ。安らいだ気分が演奏に投影されている。内的なピアノの速さ、のようなものが、ゆっくりになっている。聴き手に迫る緊張感のようなものは、もはやない。9/1の最終曲My Romance に至って、穏やかに曲を終える歓び、のようなものを感じた。とにかくタッチが軽やか、なのだ。そして演奏の終盤、疾走するように演奏を早めていくが、気分は明るい、聴き手も弾き手も。決して「死に急ぐ」ような演奏一辺倒ではないのだ。

 最後のMCの声の明るさ、が物語っている。

 

[2019-05-21] 

早速聴いている。遅い時間に仕事から帰ったので、アンプが暖まるまで、ややエキセントリックな音。それも次第に収まると、柔らかくなっていく。

CD(2枚組)で聴いたときは、CD初期の盤のためか金属音が勝ったようなピアノで、どうも聴く気になれなかった。かなり激しいタッチだから尚更だ。しかし、このレコードは実に音が良い。柔らかい日本盤固有の特質が、最晩年の激しい演奏と巧く調和し、聴かせる。ベースがオフ気味なのだけど、気にならない。エヴァンスのピアノが実に美しい。ライヴ空間が素晴らしく伝わる。

1枚目と2枚目を聴いた。8月31日から9月1日にかけての演奏。その違いに驚く。8月31日の演奏はかなり激しい。この頃のライヴを聴いて驚くのは、その速度感。どのような曲であっても、速い曲も遅い曲も、かつての演奏での美音のまま、聴き手を休ませず疾走する。8月31日は、それが特に顕著で、破綻寸前の弾けるような音。エヴァンスの激情を一身に受けるような印象。9月1日は一転して、調和が取れたようなバランスの良い印象。

日々の気持ち、あるいは体調の移ろいが驚くほど伝わるアルバム。ボクはコンプリートモノは概して冗長で苦手なのだけど、コレは違う。確かにキーストン・コーナーでの1週間、死の僅か半月前のライヴに連日訪れているような、錯覚を覚えた。明日はどうだろうか。

 

[2019-05-20] 最晩年のLPレコード10枚組

カッキーに教えられて、シネモンドでエヴァンスの映画があることを知った。何とか今週行けたらいいなあ。既にDVDでは見ているが、劇場で浸りたい作品。

晩年に至るまで麻薬に頼っていたエヴァンスの話は陰惨ではあるが、その死の間際の演奏は熱く、冷たく、美しい。その緊迫した音の流れは凄い。確かに命を燃焼させてるのだ。1980年頃のジャズ誌を読んでも、過去の人であったエヴァンスなのだけど、過去の人で済ませられない何か、が迫ってくる。当時の若手ベース奏者であったマーク・ジョンソンもいい。暫く死期が迫ったエヴァンスの音に浸ろうか、とも思う。

今日届いたレコードはエヴァンス最晩年のライヴ、LPレコード10枚組。1990年の発売。死後10年に出された未発表ライヴ。CD時代になって、数多く出るようになった著名奏者「未発表ライヴ」の先駆けだ。

1987年にマーケットではLPレコードとCDの売り上げ逆転。だから1990年にはレコードの発売自体が急減した時期。だから市場にタマ数が少ない。しかも10枚組なんて、プレスされただけでも驚き。かなり遭遇率が低いアルバム。変な話ではあるが、逆立ちしたようなvintage感がある。

Boot紛いのレコードは避けつつエヴァンスのレコードを集めているが、これは最難関のような気がする。間違いなくリヴァーサイドのオリジナルより少ないのではないか。しかし、ボクの価値観ではもとの定価程度しか出せないので、出物まで随分と時間がかかった。DISCOGSでは猛烈な価格であるが、ゆっくり待てばもとの定価程度、だ。

コンセクレイション~ザ・ラスト・コンプリート・コレクション

コンセクレイション~ザ・ラスト・コンプリート・コレクション