K’s Jazz Days

K’s Jazz Days

ジャズを中心とした音楽と本の備忘録

秋の始まり:陰翳のある大きな空が広がる金沢

木曜日は早々に仕事を切り上げ、夕暮れ前に帰った。ふと見上げると、細かな陰翳を孕んだ灰色の雲が幾重にも広がり、とても空が大きい。彩りが鮮やかなモノトーンの空が眩しい。卯辰山のうえには黒い雲が重なり、土臭い風が雨の予感を運んでいた。夏の残滓がすっかり消えて、秋空になっていた。それにしても、夏の空には秋の予感を感じ、秋の空には冬の胎動を感じるのは何故だろうか。そんなことが何故か嬉しく、暫く眺めていた。

ほどなく夕暮れ。安っぽいセロハンを通したような黄色い光が裏の竹林を照らしている。ほどなく大粒の雨。ボクは宵からの宴のために、ハタハタを捌き、飛龍頭を炊き、五郎島金時を茹で、堅豆腐を切っていた。窓から雨交じりの風が吹きこむなか、宴の準備。親しい友人達がやってきて、音楽を聴きながらの呑み喰い。愉快な時間を過ごした。宴のホスティングで、ボクの気持ちは昂ぶり、なかなか酔えない。好きな音を選んで流すだけでも、十分昂奮するしね。皆を送り出した後は、昂奮した気持ちだけが残るので、途方に暮れる。だから気持ちを落としに呑みに出ることにした。

夜半過ぎに片付けを終え、外に出ると雨上がり。冷たい風が吹いている。すっかり秋の気分に浸った。近所のバーのカウンターで、独り呑んで、徐々に気持ちを落としていくステップが気持ち良い。帰り際、ボクと同じく関西から来たKさんと、この地・この季節の「雲の陰翳」の素晴らしさに話が及んだ。時々刻々移ろう光により投影された雲の陰翳は、我ら「他所モノ」には堪らなく素晴らしいのだ。小降りの雨の中、深く深く酔って帰った。

久方ぶりに夢の残香のない朝を迎えて空を見上げると、風に雲が流れ、晴天から暗い曇天までのキネマスコープを映し出していた。とても甘い気持ちになって、日々、冬への小さなステップを踏み続ける秋空を飽きるまで眺めていたいと思った。